NPO法人の義務と責任について~認定NPO法人の認定基準と税制優遇措置

テーマ:NPO法人の義務と責任

 

NPO法人の義務とそれに違反したときに負うことになる責任について、一般のNPO法人認定(仮認定)NPO法人を対比しながら、全6回にわたって見ていきたいと思います。

 

第4回の今日は、NPO法人の認定制度についておさらいしたいと思います。

 

前回まで見てきたように、NPO法に定める公益性の要件を満たしている団体は所轄庁の認証により法人格を付与されます。さらに、所定の要件をすべて満たして、所轄庁の認定を受けたNPO法人は、認定NPO法人として様々な税制上の優遇措置を受けることができます。

 

【認定申請について】

認定又は仮認定を受けるためには、申請書を提出した日を含む事業年度の初日において、その設立の日以後1年を超える期間が経過していることが基準とされています。

したがって、事業年度が1年である法人について、その設立初年度が1年に満たない期間となっている場合は、事業年度の期間が1年である第2期終了し、設立後の第1期及び第2期の事業年度報告書等を作成し、所轄庁に提出していれば、最短で、その時点で認定又は仮認定の申請をすることができます。

 

後述するように、認定を取得することにより税制上の優遇措置を受けられるなど、そのメリットは大きいので、当然、認定NPO法人として義務も増えることになりますが、法人の設立時から認定要件を意識した組織設計運営を行うことが推奨されます。

 

【認定基準について】

次の①から⑧までの要件をすべて満たして、所轄庁の認定を受けたNPO法人は、認定NPO法人として様々な税制上の優遇措置を受けることができます。

要件

主な内容

パブリック・サポート・テスト(PST)に関する基準 3つの基準(ⅰ相対値基準、ⅱ絶対値基準、ⅲ条例個別指定基準)の中のいずれかを満たすこと
(ⅰとⅱは実績判定期間)
活動の対象に関する基準 事業活動のうち共益的活動や特定の者等に便益が及ぶ活動が占める割合が50%未満であること(実績判定期間)
運営組織及び経理に関する基準 ⅰ 各役員について、親族関係者等で構成するグループの割合が役員総数の3分の1以下であること
ⅱ 各社員の表決権が平等であること
ⅲ 会計に関して監査を受けていること又は青色申告法人と同等の取引記録、帳簿の保存を行っていること
ⅳ 不適正な経理を行っていないこと
事業活動に関する基準 ⅰ 宗教活動、政治活動、特定の公職者等を支援等していないこと
ⅱ 役員等に特別の利益を与えないこと
ⅲ 総事業費のうち、特定非営利活動事業費の割合が80%以上であること(実績判定期間)
ⅳ 受入寄付金総額の70%以上を特定非営利活動事業費に充てること(実績判定期間)
情報公開に関する基準 事業報告書等、役員名簿及び定款等及びその他の書類が閲覧できるようになっていること
事業報告書等の提出に関する基準 各事業年度における事業報告書等を所轄庁へ提出すること
不正行為等に関する基準 法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと
設立後の経過期間に関する基準 申請した日を含む事業年度の初日において設立の日以後1年を超える期間が経過していること

上記③、④のⅰとⅱ、⑤、⑥、⑦の基準は、実績判定期間内の各事業年度だけでなく認定時まで適合している必要があります。

 

また、次のいずれの欠格事由にも該当しないことが必要です。

役員のうち、次の(1)から(4)のいずれかに該当する者がある
(1)認定等を取り消された法人において、その取消原因の事実があった日以前1年内に当該法人のその業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しない者
(2)禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日等から5年を経過しない者
(3)NPO法若しくは暴力団員不当行為防止法等に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その執行を終わった日等から5年を経過しない者
(4)暴力団の構成員等
認定等の取消しの日から5年を経過しない
定款又は事業計画書の内容が法令等に違反している
国税又は地方税の滞納処分が執
行されている又は当該滞納処分の終了の日から3年を経過しない
国税に係る重加算税又は地方税に係る重加算金を課されてから3年を経過しない
次の(1)、(2)のいずれかに該当する法人
(1)暴力団
(2)暴力団又は暴力団の構成員等の統制下にある法人

 

なお、認定有効期間は、認定の日から起算して5年です。

また、認定基準のうち、PST基準以外の基準(上記②から⑧)に適合すると、所轄庁の仮認定を受けることができます。この有効期間は、仮認定の日から起算して3年です。

 

認定基準については、こちらでも詳しく解説しています。「パブリック・サポート・テストについて」「会計・経理に関する要件について

 

【税制上の優遇措置について】

Ⅰ 個人が支出した認定(仮認定)NPO法人への寄付金

個人が認定NPO法人又は仮認定NPO法人に対して、その法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄付をした場合は、特定寄付金に該当し、寄付金控除(所得控除)又は税額控除のいずれか有利な方を選択適用できます。

詳しくは、こちらもご覧ください。「個人が認定NPO法人に寄付をした場合の税制優遇について

 

Ⅱ 法人が支出した認定(仮認定)NPO法人への寄付金

法人が認定NPO法人又は仮認定NPO法人に対して、その法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄付をした場合は、一般寄付金の損金算入限度額とは別に、特定公益増進法人に対する寄付金の額と合わせて、特別損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められます。

詳しくは、こちらもご覧ください。「法人が認定NPO法人に寄付をした場合の税制優遇について

 

Ⅲ 相続人が認定NPO法人に寄付した相続財産

相続又は遺贈により財産を取得した者が、その取得した財産を相続税の申告期限までに認定NPO法人(仮認定NPO法人は適用なし。)に対して、その法人の行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄付をした場合は、その寄付をした財産の価額は相続税の課税価格の計算の基礎に算入されません。

詳しくは、こちらもご覧ください。「認定NPO法人の税制優遇について~相続人が認定NPO法人に寄付をした場合

 

Ⅳ 認定NPO法人のみなし寄付金制度

認定NPO法人(仮認定NPO法人は適用なし。)が、収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で特定非営利活動に係る事業に支出した金額は、その収益事業に係る寄付金の額とみなされ、一定の範囲内で損金算入が認められます。

詳しくは、こちらもご覧ください。「NPO法人の法人税について~みなし寄付金制度(認定NPO法人の税制優遇)

 

NPO法人の義務と責任については、次回以降、詳しく解説します。