テーマ:NPOの税務
NPOも、給与などの所得の支払者として、所得税を源泉徴収して国に納付する義務があります。
今回は、所得税の源泉徴収制度と年末調整について解説したいと思います。
【源泉徴収制度とは】
所得税は、納税者本人が自ら暦年1年間の所得に対する税額を申告しかつ納付するのが基本です。
しかし、特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する制度が採用されており、これを源泉徴収制度といいます。
源泉徴収制度では、①給与や利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者は、②その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、③支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付します。
源泉徴収した所得税は徴収月の翌月10日までに納付します。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、所轄税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受けることにより、源泉徴収した所得税を年2回にまとめて納付する納期の特例の制度が設けられています。
源泉徴収制度により源泉徴収された所得税の額は、最終的にはその年の年末調整や確定申告によって精算されます。
【年末調整とは】
給与の支払者は、毎月の給与の支払いの際に所定の「源泉徴収税額表」によって所得税の源泉徴収をすることになっていますが、その源泉徴収した税額の1年間の合計額は、給与の支払を受ける人の年間の給与総額について納めなければならない税額(年税額)と一致しないのが通常です。
一致しない理由は様々ですが、配偶者特別控除や生命保険料、地震保険料の控除などは年末調整の際に控除することとされているためです。
このような不一致を精算するため、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収または還付し精算する手続が年末調整です。
■年末調整の対象となる人、ならない人
対象となる人 |
対象とならない人 |
原則、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人全員
(1)1年を通じて勤務している人 |
(1)1年間の給与の総額が2,000万円を超える人 |
年末調整の対象とならない人は、自分で確定申告をして税額の精算をすることになりますので、期限までに住所地の所轄税務署長に確定申告書を提出する必要があります。
毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日まで
の間に各人の納税地(通常は住所地)の所轄税務署長に確定申告書を提出してください。
また、医療費控除や認定NPO法人寄付金特別控除などの控除は、確定申告によって受ける必要があります。
■年末調整の手順
①「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、「配偶者特別控除申告書」、「保険料控除申告書」などの提出を受けます。
※所得税法では、その年の12月31日の現況で控除対象扶養親族などの判定を行うことになっています。
②1年間の給与と徴収税額を集計します。
③上記②から給与所得控除額を差し引いて「給与所得控除後の給与等の金額」を計算します。
④各種「申告書」から各人の所得控除額を求め、これを③から差し引いて「課税給与所得金額」を算出します。
⑤「課税給与所得金額」(1,000円未満切捨て)に応じ、「年末調整のための所得税額の速算表」に示された税率に従って「年税額」を確定します。
⑥上記⑤で確定した「年税額」と源泉徴収した税額との差額を以下のように調整します。
確定年税額<源泉徴収税額 → 年末調整対象者へ還付
確定年税額>源泉徴収税額 → 年末調整対象者より徴収
⑦1月の納付時に、年末調整分を加減算して源泉所得税を税務署に納付します。
■年末調整後の手続
<源泉徴収票>
年末調整後に、各人の源泉徴収票を作成して本人に交付し、会社には各人の源泉徴収簿を保存しておきます。
<給与支払報告書>
給与支払報告書(源泉徴収票と同じフォーム)を各人2枚ずつ作成し、総括表とともに、翌年1月31日までに関係市区町村に提出します。この支払報告書をもとに、住民税が算定されます。
<法定調書合計表>
給与等の支払額等を記載した法定調書合計表を翌年1月31日までに税務署に提出します。
法定調書合計表には、報酬・料金や家賃の支払いについても記載し、一定の場合、源泉徴収票または支払調書の添付が必要になります。