テーマ:NPO法人の法人税
今回から、NPO法人の法人税について見ていきたいと思います。
法人税については、NPO法人は収益事業課税が採用されており、税法で定める収益事業を行っている場合に限り、申告・納税する義務が生じます。課税所得が発生しない場合(赤字)でも申告義務があります。
住民税、事業税についても同様で、収益事業を行っている場合は、申告・納税の義務があり、また、都道府県民税及び市町村民税については均等割があるため、課税所得が発生しない場合(赤字)にも原則課税が行われます。
【NPO法と法人税法の事業区分】
NPO法人において収益事業課税が行われるか否かは、1つ1つの事業ごとに個別に検討を行って、申告する収益事業を特定していくことになります。
以下の事例では、B事業とD事業から生じる所得について、法人税が課税されることになります。
事業 |
NPO法 |
法人税法 |
課税対象 |
A |
特定非営利活動に係る事業 | 非収益事業 | 非課税 |
B |
特定非営利活動に係る事業 | 収益事業 | 課税 |
C |
その他の事業 | 非収益事業 | 非課税 |
D |
その他の事業 | 収益事業 | 課税 |
【収益事業の区分経理】
このようにNPO法人は、収益事業から生ずる所得にのみ法人税が課せられるため、収益事業から生ずる所得の正確な把握のため、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならないとされています。(法人税法施行令第6条)
そのため、NPO法人は、法人全体の活動状況を表す「活動計算書(計算書類)」の作成とともに、税金計算の基礎となる書類として、課税範囲である収益事業から生じる収益、費用・損失及び配賦された共通費が集計された「収益事業損益計算書」も作成することになります。
収益事業損益計算書の作成にあたっては、個々の仕訳入力の段階からNPO法の事業区分と法人税法の事業区分に分けて損益を部門管理する必要があります。
費用又は損失の区分経理は、法人税法基本通達15-2-5の以下の定めを参考に行います。
①収益事業について直接要した費用の額又は直接生じた損失の額は、収益事業に係る費用又は損失の額として経理する。
②収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用又は損失の額は、継続的に資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比その他当該費用又は損失の性質に応ずる合理的な基準により収益事業と収益事業以外の事業とに配賦し、これに基づいて経理する。 |
さらに、この経理区分は、単に収益及び費用に関する経理だけでなく、資産及び負債に関する経理を含むことに留意することとされており(法人税法基本通達15-2-1)、基本的には資産・負債についても区分経理が必要となります。
このように、NPO法人においては、法人税が課税される収益事業の特定が大切となりますので、次回は、法人税法上の「収益事業」の種類と具体的判定について詳しく解説します。