テーマ:NPO法人会計基準
NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき「企業会計原則」と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。
NPO法人に特有の取引等について前半と後半に分けて見ていきたいと思います。
第6回の今日は、NPO法人に特有の取引等の前半として、固定資産等の現物寄付を受けた場合や、無償又は著しく低い価格での施設の提供等の物的サービスやボランティアの受入れをした場合の処理について解説します。
【NPO法人に特有の取引等(前半)】
NPO法人会計基準(同注解) |
解説 |
<現物寄付の取扱い> 24.受贈等によって取得した資産の取得価額は、取得時における公正な評価額とする。 |
現物寄付を受けた固定資産等については、その取得時における公正な評価額を取得価額とします。 「公正な評価額」としては、市場価格によるほか、専門家による鑑定評価額や、固定資産税評価額等を参考に合理的に見積もられた価額等が考えられます。 活動計算書における表示ですが、当該受贈益は受取寄付金の内訳項目として「○○受贈益」として経常収益に記載します。この記載により、現物寄付による資産受入れの事実を表現することができます。 ~参考~企業会計原則 |
<無償又は著しく低い価格で施設の提供等を受けた場合の取扱い> 25.無償又は著しく低い価格で施設の提供等の物的サービスを受けた場合で、提供を受けた部分の金額を合理的に算定できる場合には、その内容を注記することができる。 なお、当該金額を外部資料等により客観的に把握できる場合には、注記に加えて活動計算書に計上することができる。 |
NPO会計基準は、ボランティアの受入れをした場合や無償又は著しく低い価格での施設の提供等の物的サービスを受けた場合において、従来どおり会計的に認識しない方法に加え、「合理的に算定できる場合」には注記でき、「客観的に把握できる場合」には注記に加えて活動計算書への計上も可能としています。
NPO法人は、支援者等の好意で、無償又は著しく低い価格で会議室を使用するなど「物的サービス」の提供を受けることがあります。
[1]無償又は著しく低い価格で提供された物的サービスについては、特に会計上の処理や財務諸表への表示は行わない。 [2]-1【ステップ1】:その物的サービスの金額を「合理的に算定できる場合」には、「財務諸表に注記」する。 [2]-2【ステップ2】:その物的サービスの金額を「客観的に把握できる場合」には、注記をした上で「活動計算書に計上」する。 なお、活動計算書に計上する際には、「施設等受入評価益」と「施設等評価費用」をそれぞれ同額で計上し、その金額換算の根拠についても注記において明確にします。 |
<ボランティアによる役務の提供の取扱い> 26.無償又は著しく低い価格で活動の原価の算定に必要なボランティアによる役務の提供を受けた場合で、提供を受けた部分の金額を合理的に算定できる場合には、その内容を注記することができる。 なお、当該金額を外部資料等により客観的に把握できる場合には、注記に加えて活動計算書に計上することができる。 |
NPO会計基準は、ボランティアの受入れをした場合や無償又は著しく低い価格での施設の提供等の物的サービスを受けた場合において、従来どおり会計的に認識しない方法に加え、「合理的に算定できる場合」には注記でき、「客観的に把握できる場合」には注記に加えて活動計算書への計上も可能としています。
NPO法人は、ボランティアによる無償や著しく低い価格での労力の提供に支えられている部分が多く、ボランティアの労力を金額評価しないことにより、NPO法人の真の活動規模が過小評価されているとの問題もかねてから指摘されています。つまり、NPO法人の場合には、ボランティアとして労力が提供されることも多いので、営利企業などと比較して人件費の金額が低くなる傾向があることから、適正な財務比較ができないといった問題があります。 [1]ボランティアによる役務の提供については、特に会計上の処理や財務諸表への表示は行わない。 [2]-1【ステップ1】:そのボランティアによる役務の提供が「活動の原価の算定に必要な受入額である場合」か? [2]-2【ステップ2】:そのボランティアによる役務の提供の金額を「合理的に算定できる場合」には「財務諸表に注記」する。 [2]-3【ステップ3】:そのボランティアによる役務の提供の金額を「客観的に把握できる場合」には、注記をした上で「活動計算書に計上」する。
なお、活動計算書に計上する際には、「ボランティア受入評価益」と「ボランティア評価費用」をそれぞれ同額で計上し、その金額換算の根拠についても注記において明確にします。 【活動の原価の算定に必要な受入額である場合とは】 ボランティアによる労力の提供を財務諸表に注記したり、あるいは活動計算書に計上する目的は、主に「必要な労力を金銭を支払って調達した場合、事業実施に必要となるコストを把握」することですので、「活動の原価の算定に必要なボランティア」とは、事業の実施に当たって、金銭を支払っても必要とされる範囲のボランティアの労力を指します。 「活動の原価の算定に必要なボランティア」の具体的な事例としては、次のものが挙げられます。 一方で、「活動の原価の算定に必要なボランティア」と認識することが困難な事例としては、次のものが挙げられます。 【合理的に算定できる場合とは】 財務諸表に注記できる「合理的に算定できる場合」とは、その金額の算定のために、信頼できる集計の仕組みと金銭換算のための単価の使用があることを言います。そのためには、ボランティアの従事時間や車両の走行距離、施設の利用時間等の適切な集計の単位を設定し、信頼性のある資料から、漏れなく(網羅性)、正しく(正確性)、責任のある者によって(正当性)集計される仕組みを作って運用することが必要です。また、適切な単価によって評価することも必要です。こうした金銭換算の「算定方法」も財務諸表に注記することにしています。 合理的に算定できる場合の具体的な事例としては、次のようなものが考えられます。 【客観的に把握できる場合とは】 活動計算書に計上できる 「客観的に把握できる場合」とは、「合理的に算定できる場合」の要件に加えて、計上されている金額を、外部資料等によって把握できることを意味しています。具体的な金額換算の根拠としては、 ・法人所在地における厚生労働省が公表している最低賃金(時間給)を従事時間数で乗じた額 などがあります。 客観的に算定できる場合の具体的な事例としては、次のようなものが考えられます。 |
参考URL
「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(内閣府・NPOホームページ)
「実務担当者のためのガイドライン」(NPO法人会計基準協議会ホームページ)