NPO法人の義務と責任について~情報公開と届出義務

テーマ:NPO法人の義務と責任

 

NPO法人の義務とそれに違反したときに負うことになる責任について、一般のNPO法人認定(仮認定)NPO法人を対比しながら、全6回にわたって見ていきたいと思います。

第5回の今日は、NPO法人の情報公開届出義務について解説します。

 

【NPO法人の義務】

NPO法人は、公開された情報に基づき市民が監視するというNPO法の趣旨にかんがみ、寄付などの資金の使い道を情報公開していくことにより、支援者などへの説明責任を果たすことが求められます。

また、NPO法人は、国税である法人税、地方税である法人住民税及び事業税など様々な税金が課されます。

 

しかしながら、会計知識に乏しく、法令で規定された事業報告書や計算書類等の書類を所轄庁に提出していない、国税当局から源泉所得税の納付漏れ消費税の未納付について指摘されたり、法人税について収益事業の認定を受けて困惑するなどの事例もあり、それがNPO法人の現状のようです。

 

【NPO法人の義務~情報公開】

NPO法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書等の書類を作成し、事務所に備え置き、閲覧の請求があった場合には、その事務所において閲覧させなければなりません。

また、NPO法人は、事業報告書等を所轄庁に提出しなければならず、所轄庁は、閲覧又は謄写の請求があったときは、これを閲覧させ、又は謄写させなければなりません。

 

備置きと提出が必要となる書類は次のとおりです。

書類名

一般のNPO法人

認定(仮認定)NPO法人

所轄庁※3

閲覧期間

前事業年度の事業報告書等
・事業報告書
・計算書類
・財産目録
・年間役員名簿
・社員のうち10名以上の者の名簿

(事務所に備え置き社員その他の利害関係人閲覧することができる。)

(事務所に備え置き誰でも閲覧することができる。)

誰でも閲覧又は謄写の請求ができる。)
翌々事業年度の末日まで
役員名簿 ○(同上) ○(同上) ○(同上) 最新のもの
定款等 ○(同上) ○(同上) ○(同上) 最新のもの
認定等の基準に適合する旨を説明する書類及び欠格事由に該当しない旨を説明する書類 ○(同上) ○(同上) 認定(仮認定)の有効期間中
寄付金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類 ○(同上) ○(同上) 認定(仮認定)の有効期間中
前事業年度の寄付者名簿
(事務所に備え置なければならない。)
作成の日から5年(3年)間
前事業年度の役員報酬又は職員給与の支給に関する規程
(事務所に備え置き誰でも閲覧することができる。)

誰でも閲覧又は謄写の請求ができる。)
翌々事業年度の末日まで
前事業年度の収益の明細その他の事項を記載した書類※1 ○(同上) ○(同上) 翌々事業年度の末日まで
その他内閣府令で定める書類※2 ○(同上) ○(同上) 翌々事業年度の末日まで
助成金の支給の実績を記載した書類 ○(同上) ○(同上) 作成の日から3年が経過した日を含む事業年度の末日(仮認定の有効期間の満了の日)まで
海外への送金又は金銭の持出し(200万円以下のものを除く。)の金額、使途及びその予定日を記載した書類 ○(同上) ○(同上) 作成の日から3年が経過した日を含む事業年度の末日(仮認定の有効期間の満了の日)まで

 

【NPO法人の義務~所轄庁への届出】

また、役員の変更等があった場合には、遅滞なく、その旨を所轄庁に届け出なければなりません。

書類名

提出先

一般のNPO法人

認定(仮認定)NPO法人

「役員の変更等届出書」
(役員の氏名又は住所若しくは居所に変更があったとき)
所轄庁※3
「代表者変更届出書」
(代表者の氏名に変更があったとき)
所轄庁
「定款変更届出書」
(定款を変更したとき)
(所轄庁の認証が必要な場合は、「定款変更認証申請書」)
所轄庁※3
「定款の変更の登記完了提出書」 所轄庁※3
「定款変更の認証を受けた場合の提出書」
(所轄庁より定款の変更の認証を受けたとき)
所轄庁以外の関係知事※4
「認定(仮認定)に係る関係書類」
(認定(仮認定)の通知を受けたとき)
所轄庁以外の関係知事※4
「有効期間の更新に係る関係書類」
(更新の通知を受けたとき)
所轄庁以外の関係知事※4
「事務所の新設に係る関係書類」
(事務所が所在する都道府県以外の都道府県の区域内に新たに事務所を設置したとき)
所轄庁以外の関係知事

 

【NPO法人の義務~変更の登記】

登記事項に変更が生じたときは、期限内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局において変更の登記をしなければなりません。

内容

期限

一般のNPO法人

認定(仮認定)NPO法人

資産の総額
(正味財産(=資産-負債)の額)
毎事業年度終了後2か月以内
理事(代表権のない理事を除く)の変更 2週間以内
定款の変更 2週間以内

 

 

 

(脚注)

※1 収益の明細その他の事項を記載した書類

NPO法施行規則第32条第1項各号に定める次の事項を記載した書類

収益の源泉別の明細、借入金の明細その他の資金に関する事項
資産の譲渡等に係る事業の料金、条件その他その内容に関する事項
次の取引に係る取引先、取引金額その他その内容に関する事項
・収益取引、費用取引それぞれについて、上位5順位までの取引
・役員等との取引
寄付者(役員等に関する者で、前事業年度における寄付金合計額が20万円以上の者)の氏名、寄付金額及び受領年月日
給与を得た職員の総数及び当該職員に対する給与の総額に関する事項
支出した寄付金の額、相手先及び支出年月日
200万円以下の海外への送金又は金銭の持出しの金額、使途及びその実施日

※2 その他内閣府令で定める書類

次のイ~ニの認定基準に適合する旨、及び、ホのいずれにも該当しない旨を説明する書類

運営組織及び経理に関する基準(社員の表決権に関する部分を除く。)
事業活動に関する基準
(宗教活動等を行っていないこと、役員等に特別の利益を与えないこと)
情報公開に関する基準(事業報告書等を閲覧させること)
不正行為等に関する基準(法令その他公益に反する事実がないこと)
欠格事由

※3 2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する認定(仮認定)NPO法人にあっては、「所轄庁」及び「所轄庁以外の関係知事」

※4 2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する法人に限ります。