法人化のメリットについて~個人事業主と法人の比較(税務関係)

テーマ:個人事業主

 

個人事業主と法人を比較し、法人化することのメリットについて分かりやすく解説します。

 

法人化することのメリットとデメリットは、一般的に次のように言われます。

(税務関係)

メリット

節税効果が高い。

(所得が一定以上になると、個人より法人の方が税率が低い。欠損金9年間繰り越せる。など)

デメリット

交際費の一部(または全部)が損金に算入できない。

★所得の有無にかかわらず住民税の均等割が発生する。(資本金1,000万円以下の会社で年7万円

 

それでは、個人事業主と法人の違いについて、具体的に、詳しく説明したいと思います。

(税務関係)

 

個人事業主

法人

(国税)

所得税

法人税

確定申告期限 毎年3月15日まで 原則として、決算日の翌日から2か月以内
(申告期限の延長承認申請により1か月延長可能)
青色申告の要件1:届出 ■「青色申告承認申請書
開業後2か月以内に税務署に提出しなければなりません。
※1月1日~1月15日までに開業した場合は、その年の3月15日まで
※白色申告から変更する場合は、青色申告に切り換えたい年の3月15日まで
■「青色事業専従者給与に関する届出書
新たに専従者がいることとなった日から2か月以内に税務署に提出します。
※1月1日~1月15日までに開始した場合は、その年の3月15日まで
※白色申告から変更する場合は、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで
■「青色申告の承認申請書
設立の日以後3か月を経過した日と、事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までに税務署に提出しなければなりません。
青色申告の要件2:簿記

原則として、正規の簿記(一般的には複式簿記)により帳簿を備えて日々の取引を記録し、保存することが必要です。

具体的には、

(所得税法施行規則)

■一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成すること。

■仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載すること。

■総勘定元帳には、その勘定ごとに、記載の年月日、相手方の勘定科目及び金額を記載すること。

■棚卸表を作成し、棚卸資産の種類、品質、型等の異なるごとに、数量、単価及び金額を記載すること。

■貸借対照表及び損益計算書を作成すること。

■帳簿及び書類を整理し、7年間、保存すること。

同様に、複式簿記により帳簿を備えて日々の取引を記録し、保存することが必要です。

具体的には、

(法人税法施行規則)

■一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なうこと。

■仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載すること。

■総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載すること。

■たな卸表を作成し、たな卸資産の種類、品質及び型の異なるごとに数量、単価及び金額を記載すること。

■貸借対照表及び損益計算書を作成すること。

■帳簿書類を整理し、9年間、保存すること。

青色申告のメリット 青色申告特別控除として65万円の経費算入が認められる。
■純損失の繰越し(ある年に生じた純損失は、翌年以後3年間に繰り越して控除できる。
■純損失の繰戻し(純損失の繰戻し還付の請求をすることで、前年分の所得税額の還付が受けられる
■欠損金の9年間の繰越控除

■欠損金の繰戻し(資本金1億円以下の中小企業者等については、欠損金を繰り戻して前年分の法人税額の還付を請求できる。)

  以下、青色申告を前提とします。 以下、青色申告中小企業者等を前提とします。
棚卸資産 「原価法」の評価方法として、次のものから選択する。税務署への届出がない場合は、最終仕入原価法。届出により「低価法」も採用できる。
イ 個別法
ロ 先入先出法
ハ 総平均法
ニ 移動平均法
ホ 最終仕入原価法
ヘ 売価還元法
同左
固定資産 減価償却方法として、資産の種類ごとに一般的に「定額法」か「定率法」を選定する。税務署への届出がない場合、有形減価償却資産の法定償却方法は定額法(平成19年3月31日までに取得した資産は、旧定額法)。

取得価額30万円未満の減価償却資産については、一度に経費とすることができる。(平成26年3月31日までに取得し、業務の用に供したものに限る。また、年300万円を上限とする。)
⇔白色申告の場合は、取得価額10万円未満

減価償却方法として、資産の種類ごとに一般的に「定額法」か「定率法」を選定する。税務署への届出がない場合、有形減価償却資産の法定償却方法は平成10年4月1日以降取得建物は定額法、それ以外は定率法(平成19年3月31日までに取得した資産は、それぞれ旧定額法旧定率法)。

取得価額30万円未満の減価償却資産については、一度に損金に算入することができる。(平成26年3月31日までに取得し、事業の用に供したものに限る。また、年300万円を上限とする。)

役員給与

個人事業では収入から経費を差し引いた額が事業所得となり、社長本人の給与を経費にすることはできない。

法人の場合、社長が会社から毎月もらう給与を損金にできる。社長個人も給与所得について、給与所得控除を受けることができる。

(給与所得控除額)

収入金額×40%(180万円以下の部分)
※ 65万円に満たない場合は65万円
収入金額×30%(180万円を超え 360万円以下の部分)
収入金額×20%(360万円を超え 660万円以下の部分)
収入金額×10%(660万円を超え 1,000万円以下の部分)
収入金額×5 %(1,000万円を超える部分)
※ 平成25年分以後は1,500万円超の給与所得者については245万円が上限となります。

家族への給与 家族や親族に支払った給与を、全額経費として計上できる。(青色事業専従者給与
⇔白色申告の場合は、一定額の控除(配偶者86万円、その他の親族50万円
経営者の家族への給与は、それに見合うものであれば損金にできる。
交際費

交際費は全額経費に算入できる。

交際費は、一定の限度額まで損金に算入できる。

(損金算入限度額)

■交際費の金額が年600万円未満の場合

⇒交際費の金額×90%

■交際費の金額が年600万円以上の場合

600万円×90%

※ 平成25年度税制改正により、交際費を控除限度額(800万円)まで、全額損金算入できるようになります。

貸倒引当金 一定額を経費に算入できます。
個別評価貸金等の貸倒引当金
回収不能見込額を経費に算入できる。
一括評価貸金等の貸倒引当金
一括評価貸金等に次の割合を乗じた金額を経費に算入できる。
①金融業者以外の事業者 5.5%
②金融業者 3.3%
一定額を損金に算入できます。
個別評価金銭債権に係る貸倒引当金
回収不能見込額を損金に算入できる。
一括評価金銭債権に係る貸倒引当金
貸倒実績率か、次の法定繰入率を選択適用し、それらを乗じた金額を損金に算入できる。
①卸売・小売業 1%
②製造業 0.8%
③金融・保険業 0.3%
④割賦販売小売業 1.3%
⑤その他の事業 0.6%
税率 5 %(195万円以下の部分)
10%(195万円を超え 330万円以下の部分)
20%(330万円を超え 695万円以下の部分)
23%(695万円を超え 900万円以下の部分)
33%(900万円を超え 1,800万円以下の部分)
40%(1,800万円を超える部分)

※ 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間の各年分の所得については、所得税額の2.1%が復興特別所得税として加算されます。

平成24年4月1日以後に開始する事業年度

15%(年800万円以下の部分)
25.5%
(年800万円を超える部分)

※ 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの3年間に開始する事業年度については、法人税額の10%が復興特別法人税として加算されます。

消費税 前々年の課税売上高が1,000万円超の場合は、消費税の申告・納税義務を免除されない。 前々年の課税売上高が1,000万円超の場合は、消費税の申告・納税義務を免除されない。
ただし、資本金が1,000万円未満の会社は、設立後2年間は消費税が免税となる。

(地方税)

個人

法人

事業税

(事業所得-290万円)×3~5%※

※ 税率は業種により異なる。

(所得割)
400万円以下・・・2.7%
400万円超 800万円以下・・・4.0%
800万円超・・・5.3%

(地方法人特別税)
基準法人所得割額×81%

※ 資本金1億円以下を前提とします。

 

個人

法人

住民税

個人住民税(都道府県民税)
均等割・・・1,000円
所得割・・・一律4%
個人住民税(市区町村民税)
均等割・・・3,000円
所得割・・・一律6%

法人住民税(都道府県民税)
均等割・・・2万円
法人税割・・・5%
法人住民税(市区町村民税)
均等割・・・5万円
法人税割・・・12.3%

※ 資本金1,000万円以下を前提とします。