テーマ:公益法人会計基準
こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。
公益社団・財団法人や公益認定を申請する一般社団・財団法人などは、公益法人会計基準に準拠して財務諸表を作成することが求められます。
公益法人会計基準について、同じNPO(非営利組織)の会計基準であるNPO法人会計基準と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。
今日は、公益法人会計基準「財務諸表の注記」(14)関連当事者との取引について見ていきたいと思います。
関連当事者との取引については、取引の相手方、取引の内容、金額、条件などを注記により開示しなければなりません。
【公益法人会計基準】
公益法人会計基準は、昭和52年の制定後、平成16年会計基準で全面的な改正がなされ、平成20年会計基準は、公益法人制度改革関連三法の成立を受けて平成20年12月1日以降開始する事業年度から実施するものとされています。
【財務諸表の注記】
公益法人会計基準(同注解) |
NPO法人会計基準(同注解) |
解説 |
財務諸表の注記 財務諸表には、次の事項を注記しなければならない。 |
<財務諸表の注記> 31.財務諸表には、次の事項を注記する。 |
|
(14)関連当事者との取引の内容[注17] | (9)役員及びその近親者との取引の内容[注7] | 法人と関連当事者との取引のうち、重要な取引について、取引の相手方の概要、取引の内容、金額、条件などを開示します。 ただし、取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引や役員報酬については、開示対象外の取引とされるため、注記する必要はありません。 |
[注17]関連当事者との取引の内容について 1 関連当事者とは、次に掲げる者をいう。 (1)当該公益法人を支配する法人 (2)当該公益法人によって支配される法人 (3)当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人 (4)当該公益法人の役員又は評議員及びそれらの近親者 2 関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければならない。 3 関連当事者との間の取引のうち次に定める取引については、2に規定する注記を要しない。 |
[注7]役員及びその近親者との取引の注記 <役員及びその近親者の範囲> 23.役員及びその近親者は、以下のいずれかに該当する者をいう。 (1)役員及びその近親者。(2親等内の親族) (2)役員及びその近親者が支配している法人。 <注記の除外> |
【関連当事者との取引(公益法人)】
Ⅰ 関連当事者の範囲 (1)当該公益法人を支配する法人(支配法人)とは、当該公益法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している法人をいいます。(親法人) (2)当該公益法人によって支配される法人(被支配法人)とは、当該公益法人が他の法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している場合の他の法人をいいます。(子法人) (3)当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人とは、支配法人が当該公益法人以外に支配している法人をいいます。(兄弟法人) (4)当該公益法人の役員又は評議員及びそれらの近親者
Ⅱ 重要性の基準 (1)法人(支配法人、被支配法人又は同一の支配法人をもつ法人)との取引 ①正味財産増減計算書項目に係る関連当事者との取引 経常収益又は経常費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、経常収益又は経常費用の合計額の10%を超える取引を開示します。 経常外収益又は経常外費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、100万円を超える損益に係る取引を開示します。 ②貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引 その金額が資産の合計額の1%を超える取引を開示します。 (2)個人(役員又は評議員及びそれらの近親者)との取引 正味財産増減計算書項目及び貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、100 万円を超える取引をすべて開示対象とします。
【役員及びその近親者との取引(NPO法人)】 NPO法人も、法人と役員及びその近親者との間の取引は原則として注記を要します。 役員及びその近親者との取引については、その取引金額を確実に注記する必要があります。 役員及びその近親者との間にまったく取引がない場合や金額的重要性が低い場合には注記の必要はありません。 重要性が乏しいとして注記する必要がないのは、活動計算書に属する取引については、「発生金額」が100万円以下の取引、貸借対照表に属する取引については、「発生金額及び残高」が100万円以下の取引です。この100万円という金額は、一つ一つの取引金額ではなく、役員ごとに、かつ勘定科目ごとに、年間の合計金額で考えます。また貸借対照表に属する取引、つまり固定資産の購入や借入取引などは、「発生金額及び残高」で考えますから、仮に残高が100万円以下であっても、発生金額が100万円を超えていたら注記が必要です。 なお、役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い並びにこれらに準ずる取引の注記は法人の任意とされています。 |
参考:NPO法人会計基準 「わかるNPO法人会計基準の解説~財務諸表の注記31(9)役員及びその近親者との取引」
参考図書:公益法人・一般法人の会計実務/公益財団法人公益法人協会