テーマ:公認会計士
12/14(金)に開催された緊急開催シンポジウム「不正に対応した監査の基準の検討に向けて(第2弾)」~企業会計審議会監査部会:「監査における不正リスク対応基準(案)」について~に参加しました。
これは、11/7(水)に開催された緊急開催シンポジウム「不正に対応した監査の基準の検討に向けて」の第2弾です。
金融庁は、2012年12月11日、現行の監査基準とは別に「監査における不正リスク対応基準(案)」を設定し、新たな監査基準の原案を企業会計審議会の監査部会に提示しました。
2011年11月にオリンパスが長期にわたって行ってきた不正な粉飾会計が発覚しましたが、オリンパスや大王製紙など相次ぐ企業の会計不祥事により国内外の投資家などの日本の資本市場や監査制度への信頼は大きく損なわれました。
金融庁は、日本の監査制度への信頼を回復するため、監査体制を強化する新基準を2013年度から適用することを目指しています。
オリンパスの損失隠し事件に関連して、同社の会計監査を担当し、粉飾決算を見逃したあずさ監査法人と新日本監査法人に対し、2012年7月6日に金融庁より業務改善命令が出ています。
オリンパスの監査は、2009年3月期決算まではあずさ監査法人が、10年3月期からは新日本監査法人が引き継いでいます。
「監査における不正リスク対応基準(案)」の特徴は、次のとおりです。
・現行の財務諸表監査の目的は変えずに、現行制度の枠組みのなかで、「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」を識別した場合は、監査人は、職業的懐疑心を高めて、より慎重な監査手続を実施することを求めている。
・「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」として「従業員や取引先等からの通報」「特定の取引先に対する確認状が、合理的な理由なく監査人に直接返送されない」などの項目を例示列挙している。
・これらに当てはまる場合、監査の実施時期をずらすなど、企業が想定しない要素を監査計画に組み込ませる。会計に不審な点がある場合、監査法人に抜き打ちで監査を求めることなどを盛り込んでいる。
・監査事務所の品質管理体制の整備を求め、また、監査法人が交代する際には企業との間での意見の相違などの問題点について、詳細な情報の引き継ぎを求めている。
・適用対象は、社会的な影響の大きい上場会社等の金融商品取引法監査対象企業に限定され、適用時期は、平成26年3月期決算から。
新基準(案)の適用により、監査制度に対する社会の信頼を回復する効果が期待されますが、一方で、ますます監査の品質管理が求められることになり、被監査企業が監査報酬を負担する現行の仕組みの下では、監査する側も監査を受ける側も一層のコストの増加が避けられません。