テーマ:税制改正
今回は、平成25年1月1日以降に適用される「特定の役員等に対する退職所得控除計算方法の改正」について解説します。
【改正の概要】
退職手当等に係る所得税は、退職所得の金額に税率を乗じて計算されますが、「退職所得の金額」は、その年中に支払を受ける退職手当等の金額から、その人の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の1/2に相当する金額とされています。計算式に表すと次のとおりです。
退職所得の金額=(退職手当等-退職所得控除額)×1/2 |
改正後は、特定の役員等に対する退職手当等については、退職所得控除額を控除した残額を1/2にする措置が廃止され、退職所得控除額を控除した残額の全額が課税対象とされることになりました。
退職所得の金額(特定役員)=(退職手当等-退職所得控除額) |
【特定の役員等に対する退職手当等とは】
特定の役員等に対する退職手当等とは、役員等勤務年数が5年以下である人が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤務年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいいます。
【役員等勤務年数とは】
役員等勤務年数とは、退職の日まで引き続き勤務した期間のうち、役員等(次のイ、ロ、ハに掲げる人)として勤務した期間をいいます。(1年未満の端数があるときは、その端数は1年に切り上げます。)
イ 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者
ロ 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
ハ 国家公務員及び地方公務員
【源泉所得税の計算】
(設例) 勤続年数22年(使用人として勤務した期間19年、役員として勤務した期間3年) 使用人退職金1,000万円、役員退職金500万円の場合 |
① 特定役員退職所得控除額の計算
40万円 × 3年 = 120万円(A)
② 一般退職所得控除額の計算
800万円 + 70万円 ×(22年-20年)-(A)= 820万円
なお、退職所得控除額は、次のように計算します。
勤続年数 |
退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
③ 「退職所得の金額」の計算
特定役員(500万円-120万円)+ 一般[(1,000万円-820万円)× 1/2 ] = 470万円
④ 源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)の計算
(4,700,000円 × 20% - 427,500円※1)× 102.1%※2 = 523,262円(1円未満切り捨て)
※1 所得税率については、国税庁ホームページをご参照ください。
※2 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間は、復興特別所得税として所得税の額の2.1%が併せて徴収されます。