NPO法人会計基準と法人税法の関係について

テーマ:NPO法人の法人税

 

【NPO法人の法人税】

NPO法人も税法で定める収益事業を行う場合は、法人税が課税される対象となり、法人としての納税義務を果たさなくてはなりません。

法人税の課税に当たっては、法人の所得を正しく計算することが大前提となるため、法人税法の規定の大部分は、課税所得の計算規定となっています。(法人税法のほか、法人税法施行令、法人税法施行規則、国税庁の内部事務連絡である通達(法人税基本通達・法人税個別通達)など)

 

【所得計算】

法人税が課される所得は、その事業年度の益金の額から損金の額を差し引いて算定されます。

税務上の益金と会計上の収益、税務上の損金と会計上の費用との関係はおおむね一致していますが、税務会計の目的から、次のように取扱いに差があるものもあります。

①会計上は収益であるのに、税務上は益金とならないもの(益金不算入項目)減算項目

②会計上は収益でないのに、税務上は益金となるもの(益金算入項目)加算項目

③会計上は費用であるのに、税務上は損金とならないもの(損金不算入項目)加算項目

④会計上は費用でないのに、税務上は損金となるもの(損金算入項目)減算項目

 

【税務会計とは】

法人税法では、「別段の定め」を除き、収益・費用の計算については、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うこととされており、この会計処理の基準には、企業会計原則やNPO法人会計基準も含まれると解されます。(これを確定決算主義といいます。)

しかし、税務会計では、次のような社会的要請があるため、会計基準とは異なる取扱いがなされることがあります。

①課税の公平性・公正性を図ること

②課税の明瞭性・簡便性などの実務的な要請に配慮すること

③租税政策上の配慮

 

また、法人税法上の「別段の定め」によって規定されている項目が税務上認められるためには、会計帳簿において記帳する必要があり、そのため、実務上は、税務上の規定を意識した(ときには実態とかい離した)会計処理を行うことがあります。(これを損金経理といいます。)

 

【確定決算主義と損金経理とは】

法人税法は、決算日から通常2か月以内に、確定した決算に基づいて、法人税申告書を提出することを各法人に義務づけています。

申告納税の基礎となる課税所得は総会の承認などの正規の手続によって、最終的に確定した決算に基づき算定された収益事業の当期利益に税務上の加減算項目を調整して算定します。これを、「確定決算主義」といいます。

このように、課税所得は、確定した利益をもとに会計上と税務上で取扱いの異なるものを加減算して計算されますが、実は、この加減算の調整項目よりも、通常の会計処理のなかで税務上の取扱いに従って処理すべき項目が多くあります。

つまり、税法では、それらの項目については、確定した決算のなかで法人が費用または損失として処理することを求めており、通常の会計処理のなかで費用処理を行っていなければ、税務上、損金として認められません。このような税務特有の要求を「損金経理」といいます。

 

【費用と損金の違いの具体例】

経常費用についても、税務では、課税の公平性、政策的理由などから、いわゆる「別段の定め」によりいくつかの取扱いが設けられています。

■役員報酬・賞与

役員給与は、会計上は費用ですが、税務上損金算入が認められる役員給与は、職務執行前に支給時期、支給額があらかじめ定められているものであり、その具体的支給形態としては、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動型給与の3形態に限定されています。

したがって、それ以外は、役員報酬であろうと役員賞与であろうと損金に算入することはできません。

■寄付金

寄付金は、会計上は費用として計上されますが、税務上は、寄付金の損金算入限度額を設けて制限しています。

詳しくは、こちらもご覧ください。「法人が認定NPO法人に寄付をした場合の税制優遇について

■交際費

交際費は、会計上は費用として計上されますが、税務上は、原則として全額が損金に算入されませんが、政策的な配慮から、中小法人(資本金1億円以下)については一定の範囲で損金算入が認められます。

詳しくは、こちらもご覧ください。「NPO法人の法人税について~交際費の損金算入限度額

 

役員給与については、次回、詳しく解説します。