NPO法人の法人税について~役員給与

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【NPO法人の法人税】

NPO法人も税法で定める収益事業を行う場合は、法人税が課税される対象となり、法人としての納税義務を果たさなくてはなりません。

 

法人税が課される所得は、その事業年度の益金の額から損金の額を差し引いて算定されます。

税務上の益金と会計上の収益、税務上の損金と会計上の費用との関係はおおむね一致していますが、税務会計の目的から、差があるものもあります。

 

法人税法では、「別段の定め」を除き、収益・費用の計算については、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うこととされており、この会計処理の基準には、企業会計原則やNPO法人会計基準も含まれると解されます。(これを確定決算主義といいます。)

しかし、税務会計では、課税の公平や租税政策上の配慮などから会計基準とは異なる取扱いがなされることがあります。

 

【費用と損金の違いの具体例(役員給与)】

経常費用についても、税務では、課税の公平性、政策的理由などから、いわゆる「別段の定め」によりいくつかの取扱いが設けられています。

■役員報酬・賞与

役員給与は、会計上は費用ですが、税務上損金算入が認められる役員給与は、職務執行前に支給時期、支給額があらかじめ定められているものであり、その具体的支給形態としては、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動給与の3形態に限定されています。

したがって、それ以外は、役員報酬であろうと役員賞与であろうと損金に算入することはできません。

原則

法人が役員に対して支給する給与の額のうち①定期同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。
いずれかの給与に該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。

使用人兼務役員の使用人分給与および役員退職金については、不相当に高額な部分の金額を除いて、損金の額に算入されます。

①定期同額給与

(1) 支給額が同額である定期給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの

(2) 改定がある場合の定期給与で、改定後の各支給時期における支給額が同額であるもの

通常改定:定時総会による増額・減額改定

臨時改定事由による改定:役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更などにより期中に行う増額・減額改定

業績悪化改定事由による減額改定:経営状態が著しく悪化した場合に行う減額改定。単なる業績悪化や資金繰り不安は該当しないとされます。

(3) 継続的に供与される経済的利益(低廉利息、低廉賃料など)のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの

②事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、届出期限までに所轄税務署長に「事前確定届出給与」の届出をしているものです。

上記①の定期同額給与は、毎月支払われる役員給与でなければなりません。ところが、実務上は、非常勤役員について年に1度まとめて報酬を支給することもあります。その場合、報酬額が予め決まっているのであれば、利益調整に利用されることもないでしょうから、たとえ年に1度の支給であったとしても税務署に事前に届出をすることを条件に損金算入を認めるというのが事前確定届出給与です。

なお、同族会社以外の法人が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与については、その届出をする必要はありません。

届出期限は次のとおりです。

(1) 一般的な場合
次のイまたはロのうちいずれか早い日

役員給与の決議をする社員総会等の日から1か月を経過する日

会計期間開始の日から4か月を経過する日

※ 新設法人の場合はその設立の日以後2か月を経過する日

(2) 臨時改定事由により定めをした場合
次のうちいずれか遅い日

上記(1)のイまたはロのうちいずれか早い日(新設法人にあっては、その設立の日以後2か月を経過する日)

臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日

(3) 事前確定届出給与に関する定めを変更する場合
次の事由の区分に応じてそれぞれ定める日

臨時改定事由
その事由が生じた日から1か月を経過する日

業績悪化改定事由(減額改定に限る。)
次のうちいずれか早い日

・ 社員総会等の決議をした日から1か月を経過する日

・ 変更前給与の支給の日の前日

③利益連動給与

利益連動給与は、同族会社以外の法人が業務を執行する役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算定される給与で次の(1)から(3)までのすべての要件を満たすものです。

他の業務を執行する役員のすべてに対しても次の要件を満たす利益連動給与を支給する必要があります。

(1) その算定方法が、事業年度の利益に関する指標を基礎とした客観的なもので、次の要件を満たすものであること。

確定額を限度としているものであり、かつ、他の業務を執行する役員に対して支給する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。

事業年度開始の日から3か月を経過する日までに一定の報酬委員会が決定していること。

その内容が遅滞なく有価証券報告書に記載されていること。

(2) 事業年度の利益に関する指標の数値が確定した後1か月以内に支払われ、又は支払われる見込みであること。

(3) 損金経理をしていること。