テーマ:NPO法人会計基準
NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき「企業会計原則」と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。
今日は、財務諸表の注記(9)役員及びその近親者との取引について見ていきます。
NPO法人と役員及びその近親者との取引については、その取引金額、取引の相手方との関係、取引内容、取引条件等を注記する必要があります。
【企業会計原則とは】
企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。企業会計原則は、1982年以来、修正が行われておらず、その後、時代に対応して会計基準が順次公表され、会計慣行を補強しています。
会計基準は、企業会計原則に優先して適用されるべき基準とされ、公正なる会計慣行に含まれると解釈されています。つまり、企業会計原則は会計全般の公正なる会計慣行をまとめたものであり、個々の論点に関する会計慣行は、各会計基準に委ねられているのです。
【財務諸表の注記】
NPO法人会計基準(同注解) |
企業会計原則(同注解) |
解説 |
<財務諸表の注記> 31.財務諸表には、次の事項を注記する。 |
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(9)役員及びその近親者との取引の内容[注7] | 役員及びその近親者との取引については、その取引金額を確実に注記する必要があります。 なお、取引の相手方との関係、取引内容、取引条件等についての記載は、法人の任意とされています。 |
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[注7] 役員及びその近親者との取引の注記 <役員及びその近親者の範囲> 23.役員及びその近親者は、以下のいずれかに該当する者をいう。 (1)役員及びその近親者。(2親等内の親族) (2)役員及びその近親者が支配している法人。 <注記の除外> |
【関連当事者の開示に関する会計基準】
(関連当事者との取引に関する開示) |
役員及び近親者との取引の透明性を確保し、不公正なお金の流れがないかどうかを利害関係者がチェックできる仕組みを担保するため、NPO法人と役員及びその近親者との間の取引は原則として注記を要します。これは、NPO法人に限らず、役員やその近親者あるいは役員の関係会社等を通じて、社会的信頼を損なうような取引が行われる恐れは往々にしてあるため、事実を示すことによってそのような疑念を払い、信頼性を確保するという情報開示の基本的考え方に基づく要請です。
NPO法人と役員及びその近親者との間にまったく取引がない場合や金額的重要性が低い場合には注記の必要はありません。 重要性が乏しいとして注記する必要がないのは、活動計算書に属する取引については、「発生金額」が100万円以下の取引、貸借対照表に属する取引については、「発生金額及び残高」が100万円以下の取引です。この100万円という金額は、一つ一つの取引金額ではなく、役員ごとに、かつ勘定科目ごとに、年間の合計金額で考えます。また貸借対照表に属する取引、つまり固定資産の購入や借入取引などは、「発生金額及び残高」で考えますから、仮に残高が100万円以下であっても、発生金額が100万円を超えていたら注記が必要です。 なお、役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い並びにこれらに準ずる取引の注記は法人の任意とされています。 |
参考URL
「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(内閣府・NPOホームページ)
「実務担当者のためのガイドライン」(NPO法人会計基準協議会ホームページ)