【わかるNPOの法人税】《収益事業》㉙医療保健業

テーマ:NPO法人の法人税

 

こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。

NPO法人は、「法人税法上の収益事業」を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得に対してのみ課税されることとなっています。

この「収益事業」は、法人税法に定められた34種類の事業で「継続して」「事業場を設けて」営まれるものをいいますが、それぞれの事業について、法人税法などの規則も参照しながら、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、《収益事業》㉙医療保健業について見ていきます。

NPO法人が、医療や保健、介護サービスを提供する事業を行うときは、「医療保健業」として「収益事業」に該当することになります。

【医療保健業】

NPO法人が、医療や保健のサービスを提供する事業を行うときは、「医療保健業」として「収益事業」に該当することになります。

医療保健業は、医師又は歯科医師等が患者に対し医業又は医業類似行為を行う事業及びこれに直接関連するサービスを提供する事業(「医療業」)と保健衛生のサービスを提供する事業(「保健業」)を複合した概念で、「医療保健業」には、療術業(あんま、はり、きゅうなど)、助産師業、看護業、歯科技工業、獣医業等が含まれます。(法人税基本通達15-1-56)

NPO法人が介護保険法の規定に基づいて行う介護サービス事業は収益事業になるか。

NPO法人が、介護保険法の規定に基づく介護サービス事業を行うときは、「医療保健業」として「収益事業」に該当することになります。

平成12年6月に、厚生省は、国税庁へ介護サービス事業に係る法人税法上の取扱いについて照会を行い、国税庁は、介護サービス事業は以下のとおり「収益事業」に該当する旨回答しています。

(1) 介護サービス事業((2)、(3)及び(4)を除く。)・・・・・・医療保健業

(2) 福祉用具貸与・・・・・・物品貸付業

(3) 特定福祉用具販売・・・・・・物品販売業

(4) 住宅改修・・・・・・請負業

国税庁(法令解釈通達) 「介護サービス事業に係る法人税法上の取扱いについて

 


病院における給食事業、日用品の販売は収益事業になるか。

NPO法人が、患者のために給食事業を行う場合は、原則として「飲食店業」に該当することになりますが、

(1)国等又は収益事業に該当しない医療保健業を行う公益法人等の経営する病院における患者給食を主たる目的として設立された法人が、

(2)これらの病院における医療の一環として専らその病院の患者のために行う給食は、「収益事業」に該当しないものとされています。(法人税基本通達15-1-58)

NPO法人が、患者のために日用品の販売を行う場合は、「物品販売業」として「収益事業」に該当することになります。

次のような行為は、収益事業に該当しない医療保健業を行う法人がその患者を対象として行うものであっても、「収益事業」に該当するとされています。(法人税基本通達15-1-58)

・日用品の販売(物品販売業)・クリーニングの取次ぎ(請負業)・公衆電話サービス業務(通信業)

 


NPO法人が行う医療保健業で収益事業に該当しないのは、どのような場合か。

NPO法人が行う医療保健業であっても、残余財産が国又は地方公共団体に帰属すること、一定の医療施設を有していること、診療報酬の額が低廉であること等の要件に該当する法人が行う医療保健業は、「収益事業」に該当しないものとされています。(法人税法施行規則第6条)

 

(法人税法施行令)

(収益事業の範囲)

第五条 法第二条第十三号(収益事業の意義)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。

二十九 医療保健業(財務省令で定める血液事業を含む。)のうち次に掲げるもの以外のもの

イ~ヨ 省略

タ イからヨまでに掲げるもののほか、残余財産が国又は地方公共団体に帰属すること、一定の医療施設を有していること、診療報酬の額が低廉であることその他の財務省令で定める要件に該当する公益法人等が行う医療保健業

 

(法人税法施行規則)

(公益法人等の行う医療保健業で収益事業に該当しないものの要件)

第六条 令第五条第一項第二十九号タ(医療保健業)に規定する財務省令で定める要件は、次に掲げる要件(法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人以外の法人にあつては、第一号から第六号までに掲げる要件)とする。

一 公益法人等の当該事業年度終了の日における定款又は寄附行為その他これらに準ずるものに、当該公益法人等が解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は当該公益法人等と類似の目的を有する他の公益法人等に帰属する旨の定めがあること。

二 次に掲げる者(以下この条において「特殊関係者」という。)のうち当該公益法人等の役員となつているものの数が、当該事業年度を通じて当該公益法人等の役員の総数の三分の一以下であること。

当該公益法人等に対して、財産を無償で提供した者、財産の譲渡(業として行うものを除く。)をした者又は医療施設を貸与している者

当該公益法人等の行う医療保健業が個人又は法人(人格のない社団等を含む。以下同じ。)の行つていた医療保健業を継承したと認められる場合には、当該個人又は法人の行つていた医療保健業を主宰していたと認められる者

イ又はロに掲げる者の相続人及び当該相続人の相続人

イ、ロ又はハに掲げる者の親族及び当該親族の配偶者

イ、ロ又はハに掲げる者とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びイ、ロ又はハに掲げる者(イに掲げる者にあつては、個人である場合に限る。)の使用人(イ、ロ又はハに掲げる者の使用人であつた者で当該公益法人等の事業に従事するためこれらの者の使用人でなくなつたと認められるものを含む。)

イに掲げる者が法人(国及び公共法人並びに公益法人等でその役員のうちその公益法人等に対しイからニまで及びトに掲げる者と同様の関係にある者の数がその役員の総数の三分の一以下であるものを除く。)である場合には、その法人の役員又は使用人(その法人の役員又は使用人であつた者で当該公益法人等の事業に従事するためその法人の役員又は使用人でなくなつたと認められるものを含む。)

イ、ロ、ハ又はニに掲げる者の関係会社(イ、ロ、ハ及びニに掲げる者の有するその会社の株式又は出資の数又は金額が当該会社の発行済株式又は出資(当該会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の二分の一以上に相当する場合におけるその会社をいう。)の役員又は使用人(その関係会社の役員又は使用人であつた者で当該公益法人等の事業に従事するためその関係会社の役員又は使用人でなくなつたと認められるものを含む。)

三 公益法人等が自費患者から受ける診療報酬の額が、当該事業年度を通じて、健康保険法第七十六条第二項(療養の給付に関する費用)の規定により算定される額、同法第八十五条第二項(入院時食事療養費)に規定する基準により算定された同項の費用の額、同法第八十五条の二第二項(入院時生活療養費)に規定する基準により算定された同項の費用の額その他これらに準ずる額以下であり、かつ、その行う診療の程度が同法第七十二条(保険医又は保険薬剤師の責務)に規定する診療の程度以上であること。ただし、当該公益法人等が次号のイからニまでに掲げる事項のすべてに該当するものであるときは、この限りでない。

四 公益法人等が、当該事業年度を通じて、次のイからハまでに掲げる事項のうちいずれかの事項及びニに掲げる事項に該当し、又はホに掲げる事項に該当することにつき厚生労働大臣の証明を受けているものであること。

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第二十二条第一号及び第四号から第九号まで(地域医療支援病院の施設の基準)に掲げる施設のすべてを有していること。

医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十一条第二号(医師国家試験の受験資格)若しくは歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十一条第二号(歯科医師国家試験の受験資格)に規定する実地修練又は医師法第十六条の二第一項(臨床研修)に規定する臨床研修を行うための施設を有していること。

厚生労働大臣若しくは都道府県知事の指定する保健師、助産師、看護師(准看護師を含む。)、診療放射線技師、歯科衛生士、歯科技工士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士若しくは視能訓練士の養成所を有し、又は医学若しくは歯学に関する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の規定による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)の規定による大学及び旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)の規定による専門学校を含む。)の教職の経験若しくは担当診療科に関し五年以上の経験を有する医師若しくは歯科医師を指導医として、常時三人以上の医師若しくは歯科医師の再教育(再教育を受ける医師若しくは歯科医師に対して報酬を支給しないものに限る。)を行つていること。

生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十五条(医療扶助)若しくは第十六条(出産扶助)に規定する扶助に係る診療を受けた者又は無料若しくは健康保険法第七十六条第二項の規定により算定される額及び同法第八十五条第二項に規定する基準により算定された同項の費用の額若しくは同法第八十五条の二第二項に規定する基準により算定された同項の費用の額の合計額の十分の一に相当する金額以上を減額した料金により診療を受けた者の延数が取扱患者の総延数の十分の一以上であること。

社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第六十九条第一項(第二種社会福祉事業開始の届出)の規定により同法第二条第三項第九号(無料又は低額な料金による診療事業)に掲げる事業を行う旨の届出をし、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従つて当該事業を行つていること。

五 公益法人等が、当該事業年度を通じて、その特殊関係者に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給その他財産の運用及び事業の収入支出に関して特別の利益を与えていないこと。

六 公益法人等が当該事業年度においてその特殊関係者(第二号ホ、ヘ又はトに規定する使用人のうち当該公益法人等の役員でない者を除く。)に支給した給与の合計額が、当該公益法人等の役員及び使用人に支給した給与の合計額の四分の一に相当する金額以下であること。

七 公益法人等の行う事業が公的に運営されるものとして厚生労働大臣の定める基準に該当することにつき、厚生労働大臣の証明を受けていること。

 

(法人税基本通達)

(医療保健業の範囲)

15-1-56 令第5条第1項第29号《医療保健業》の医療保健業には、療術業、助産師業、看護業、歯科技工業、獣医業等が含まれる。(昭56年直法2-16「七」、平15年課法2-7「五十三」により改正)

(日本赤十字社等が行う医療保健業)

15-1-57 令第5条第1項第29号《非課税とされる医療保健業》に掲げる公益法人等(同号チからヲまで及びヨに掲げる公益法人等を除く。)については、その行う医療保健業の全てが収益事業とならないことに留意する。(昭56年直法2-16「七」により追加、昭59年直法2-3「九」、平6年課法2-1「九」、平6年課法2-5「九」、平19年課法2-17「二十九」、平20年課法2-5「二十九」、平23年課法2-17「三十二」により改正)

(病院における給食事業)

15-1-58 収益事業に該当しない医療保健業に係る医療の一環として行われる患者のための給食であっても、その給食が当該医療保健業を行う公益法人等以外の公益法人等によって行われている場合には、当該給食に係る事業は当該医療保健業には含まれないのであるが、国等又は収益事業に該当しない医療保健業を行う公益法人等の経営する病院における患者給食を主たる目的として設立された公益法人等がこれらの病院における医療の一環として専らその病院の患者のために行う給食は、収益事業に該当しないものとする。(昭56年直法2-16「七」、平20年課法2-5「二十九」により改正)

(注) 収益事業に該当しない医療保健業を行う公益法人等がその患者を対象として行うものであっても、日用品の販売、クリーニングの取次ぎ、公衆電話サービス業務等の行為は、収益事業に該当することに留意する。

(非課税とされる福祉病院等の判定)

15-1-64 公益法人等の行う医療保健業が規則第6条各号《非課税とされる福祉病院等》に掲げる要件(非営利型法人以外の法人にあっては、同条第1号から第6号までに掲げる要件)の全てに該当するかどうかの判定は、公益法人等についてその事業年度ごとに行うものであるから、同条第4号及び第7号の厚生労働大臣の証明についても事業年度ごとに証明のあることを必要とするのであるが、一度証明された事実に異動のない場合には、同条第4号イ、ロ及びハに掲げる事項については、当該証明を省略することができる。(昭56年直法2-16「七」、平12年課法1-49、平15年課法2-22「十四」、平20年課法2-14「四」、平23年課法2-17「三十二」により改正)

(注) 厚生労働大臣の証明した事項が事実と異なると認められる場合には、厚生労働大臣と協議の上処理する。

(災害等があった場合の特例)

15-1-65 規則第6条第2号又は第4号イからハまで《非課税とされる福祉病院等》の要件に該当するかどうかを判定する場合において、災害その他特別の事情の発生により一時的にこれらの要件に該当しない期間が生じても、その後速やかに旧に復しているとき又は旧に復することが確実であると認められるときは、当該事業年度を通じてこれらの要件に該当しているものとする。(昭56年直法2-16「七」により改正)

(福祉病院等の健康保険診療報酬の額に準ずる額)

15-1-65の2 15-1-63の2《オープン病院等の健康保険診療報酬の額に準ずる額》の取扱いは、規則第6条第1号《非課税とされる福祉病院等》に規定する公益法人等の行う医療保健業に係る診療報酬又は利用料の額が同条第3号に規定する「これらに準ずる額」に該当するかどうかの判定について準用する。(昭59年直法2-3「九」により追加)

(オープン病院等の健康保険診療報酬の額に準ずる額)

15-1-63の2 規則第5条第5号《非課税とされるオープン病院等》の「これらに準ずる額」とは、次に掲げるような法令の規定等により算定される診療報酬又は利用料の額をいう。(昭59年直法2-3「九」により追加、昭63年直法2-14「七」、平6年課法2-5「九」、平15年課法2-7「五十三」により改正)

(1) 公害健康被害の補償等に関する法律第4条第4項《認定等》に規定する被認定者に係る診療報酬等で同法第22条《診療方針及び診療報酬》の規定により算定される額

(2) 労働者災害補償保険法第7条第1項第1号《保険給付の種類》に規定する業務災害及び同項第2号に規定する通勤災害を被った者に係る診療報酬等で同法第13条又は第22条《療養給付》の規定による療養の給付に要するものとして昭和51年1月13日付基発第72号「労災診療費算定基準について」厚生労働省通達により算定される額

国税庁ホームページ 医療保健業

34種類の事業一覧 「NPO法人の法人税について~収益事業の種類と具体的判定