NPO法人と税制優遇について~租税原則「公平の原則」との調和

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今日は、NPO法人の税制優遇措置について、その理論的背景を説明します。

 

1.租税原則「公平の原則

税制をどのように構築することが望ましいかについての基本的考え方に、「公平の原則」というものがあります。

公平の原則」とは、様々な状況にある人々が、それぞれの負担能力(担税力)に応じて分かち合うことです。

これが税務の主な目的となります。

一方、会計の目的は主に、経営実態を適切に開示することです。すなわち、会社のありのままを情報として開示することです。

事実を歪めて情報開示することが粉飾決算で、決算書類に粉飾がないことを保証するのが会計監査です。

 

このように税は公平に課税されるのが原則ですが、それではなぜNPO法人には税制優遇制度が認められるのでしょうか?

それを理解するには、まず「新しい公共」について理解する必要があります。

 

2.「新しい公共

社会には様々な公共ニーズがあり、どんなに「大きな政府」であっても、行政だけで無数にある公共ニーズを発見してその実現を図ることは不可能です。

しかしながら、今日の社会には多様な生活利益実現への期待があり、それを実現する「大きな政府」への要請があります。一方で、「大きな政府」は財政の肥大化を招くことから、政府が提供するサービスを小さくすべきであるとする「小さな政府」への要請もあります。

この相反した要請のなかで生まれてきた考え方が「新しい公共」という考え方です。

 

これまでの公共サービスは、行政が主体となって提供するものとされ、市民はこれを供給される立場にありましたが、「新しい公共」の考え方では、市民やNPO等の民間の諸団体が公共サービスの提供者の役割を担うことによって、これまで行政だけでは実施できなかった公共サービスの領域を切り開き、公共サービスの効率的提供ができます。

 

3.「公平の原則」と「新しい公共」の担い手に対する税制優遇の調和

それでは新しい公共の担い手であるNPO法人に対する税制優遇措置は、「公平の原則」とどのように調和するのでしょうか?

 

・NPO法人は、すでに税の納付と同様の社会的分担を果たしている。

「税」とは、公共財・サービスの提供のための分担金ですが、この分担は、必ずしも「税」という金銭の支払に限られないので、NPO法人は公共サービスの提供により、すでに社会的分担を果たしていると考えられます。

 

・行政はNPO法人の活動により財政支出の軽減を図ることができる。

市民が行政に期待する様々な公共財・サービスを、NPO法人等の民間が自発的に供給することで、行政は財政支出の軽減を図っています。さらに、この民間による公共財・サービスの供給は、それを供給したいとの意欲や知識・問題意識を持った人々が自発的に行うため、行政が自ら行うのと異なり、良質で効率的な供給が期待できます。

 

このように、NPO法人等の「新しい公共」の担い手は、その活動によって「公共財・サービスの提供のための分担」を行っているし、また、行政はその活動によって財政支出を削減できます。

さらに、これにより社会の多様なニーズが満たされることになるので、NPO法人等の「新しい公共」の担い手に対する税制優遇は、「公平の原則」と調和すると考えることができます。