NPO法人会計基準について~一般原則

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NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき企業会計原則と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。

第1回の今日は、一般原則について見ていきたいと思います。

 

【企業会計原則とは】

企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。

 

【一般原則】

NPO法人会計基準

企業会計原則(同注解)

解説

<真実性・明瞭性>
3.NPO法人の財務諸表等(財務諸表及び財産目録)は、NPO法人の真実な実態を表示し、かつ明瞭に表示するものでなければならない。
<一般原則>
(一 真実性の原則)
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

(四 明瞭性の原則)
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

「真実」な報告とは、嘘をつかないということです。
ただし、ここでいう真実は、絶対的なものではなく、相対的な真実を意味します。すなわち、会計は、判断や見積りの介入、1つの会計事実について複数の会計処理を認めており、真実の会計情報は複数存在することになります。

「明瞭」な表示は、次の2つを求めています。
①利害関係者に対して情報の適切な公開を行うこと(すべての秘密の公開ではありません)
概観性と詳細性のバランスのとれた計算書類の表示

<適時性・正確性>
4.NPO法人は、適時かつ正確に作成した会計帳簿に基づいて、財務諸表等を作成しなければならない。
(二 正規の簿記の原則)
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
「適時」かつ「正確」な会計帳簿(=正規の簿記の原則に従った会計帳簿)とは、
すべての取引が
①(網羅性)漏れなく、
②(検証可能性)客観的な証拠資料に基づいて、
③(秩序性)一定の体系のもとに秩序立って、
記録された会計帳簿です。
<継続性>
5.会計処理の原則及び手続並びに財務諸表等の表示方法は、毎事業年度継続して適用し、みだりに変更してはならない。
(五 継続性の原則)
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
会計は、1つの会計事実について2つ以上の代替的な処理方法を認めているため、その選択適用を無条件に認めると、恣意的な利益操作の可能性があります。
そこで、いったん採用した会計処理方法を毎期継続して適用することを求め、利益操作を排除し、また、会計数値の期間比較可能性を確保しています。

ただし、その変更に正当な理由があり、かつ、変更により従来の方法よりも合理的な結果が期待できる場合には、会計方針を変更することが認められます。

<単一性>
6.情報公開のため、社員総会への提出のため、助成金等の申請目的のため、租税目的のためなど、種々の目的のために異なる形式の財務諸表等を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、NPO法人の判断によって、事実の真実な表示をゆがめてはならない。
(七 単一性の原則)
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
単一性とは、表示形式に相違はあっても、基礎となる会計記録は同じでなければならないとする、会計帳簿の単一性を求めるものです。つまり、「実質一元、形式多元」ということです。

NPO法人は、助成事業や委託事業を行う場合、その部分だけ区分して財務諸表を作成することがあります。

この場合、NPO法人全体の会計報告(①)と同時に、助成事業や委託事業の対象事業部分について、措定の科目や様式にしたがった会計報告(②)をすることになります。

①の目的は、NPO法人全体の経理状況について多数の利害関係者に情報を公開することであり、②については、資金使途の制約要件を守ったかどうかという資金提供側の関心事項に応えることが目的となります。
このように両者は目的が異なるため、様式や対象期間が異なることがありますが、「単一性の原則」により両者に矛盾がないことが求められます。

つまり、助成財団等への報告についても、正式の帳簿である法人全体の会計帳簿から作成し、対象期間や勘定科目などについて加工が必要な場合は、どのような加工をしたのかの経緯を
説明できる資料を作っておくことになります。

<重要性>
7.重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに財務諸表等の表示について簡便な方法を用いることができる。
重要性の高いものはより厳密な方法を用いて処理しなければならない。
[注1] 重要性の原則の適用について
企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。
会計は、その経済的事実に基づいて、正確に忠実に会計処理を行うことを要請しているため、原則的には1円たりとも軽視することはできません。
しかし、たとえば非常に少額の消耗品について、その受払いに基づいて貸借対照表に計上したとしても、利害関係者にとっても、また、その法人にとっても、手間ヒマのわりに、あまり意味のあることではありません。
そこで、実践的な考え方から、一部簡便な会計処理も認められています。

また、重要性の原則には、このように重要性の乏しいものについての簡便な処理・表示を認めるという側面と、逆に重要性の高いものについては詳細な処理・表示を求めるという側面もあります。

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