テーマ:NPO法人会計基準
NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき「企業会計原則」と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。
今日は、収益及び費用の把握と計算(その1)14.費用の区分について見ていきます。
NPO法人の経常費用は、 「事業費」と「管理費」に区分し、 それぞれを人件費とその他経費に分類したうえで、さらに形態別に分類して表示します。
【企業会計原則とは】
企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。
【収益及び費用の把握と計算ーその1】
NPO法人会計基準(同注解)
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企業会計原則(同注解)
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解説
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<費用の区分>
14.NPO法人の通常の活動に要する費用は、事業費及び管理費に区分し、かつそれぞれを人件費及びその他経費に区分して表示する。[注1及び注4] |
(三 営業利益)
F 販売費及び一般管理費は、適当な科目に分類して営業損益計算の区分に記載しなければならない。 |
NPO法人の経常費用は、
■「事業費」と「管理費」に区分し、
■それぞれを人件費とその他経費に分類したうえで、さらに形態別に分類して表示します。
この内訳表示は、NPO法人間の比較可能性やNPO法人のマネジメント等の観点から求められています。
原価の分類方法には、①原価の発生目的に着目して機能別に分類する方法と②原価の発生形態に着目して形態別に分類する方法がありますが、NPO法人の経常費用については、②原価の発生形態に着目して形態別に分類することになりますので、「何のために」支払ったかではなく、「何を」支払ったかに着目して、勘定科目を選ぶことになります。 |
[注1]活動計算書の表示方法
<人件費>
5.人件費は、役員報酬、給与手当、臨時雇賃金、福利厚生費、退職給付費用等をいう。
<その他経費>
6.その他経費は、経常費用のうち、人件費以外のものをいう。 |
<財務諸表等規則>
(販売費及び一般管理費の表示方法)
第八十五条 販売費及び一般管理費は、適当と認められる費目に分類し、当該費用を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。 |
「その他経費」は、経常費用のうち、「人件費」以外のものをいいます。
「人件費」としては、組織の運営や事業を実施する「人」に関わる費用として以下のものがあります。
1.役員報酬
2.給料手当や通勤手当、アルバイト賃金
事業や活動の労働に対して支払われる費用で、事業に従事した人件費は「事業費」、組織全体の経理や労務、理事会や会員管理などの総務に関する業務に従事した人件費は、「管理費」になります。
3.ボランティア評価費用
ボランティアを受入れて「客観的に確定できる場合」は、活動計算書に計上できます。
4.法定福利費
厚生年金や健康保険の「社会保険」や雇用保険と労災保険の「労働保険」の雇用主負担があります。従業員の負担分は、給与から控除して預り金として処理します。
5.退職給付費用
中小企業退職金共済制度に加入して掛金を支払っている場合や、退職金支給規定に基づいて引当金を計上している場合には、当期に発生した金額を退職給付費用として処理します。
6.福利厚生費
健康診断代や従業員の慰労、結婚や親族の不幸などに出る慶弔見舞などが入ります。 |
[注4]事業費と管理費の区分
<事業費>
18.事業費は、NPO法人が目的とする事業を行うために直接要する人件費及びその他経費をいう。
<管理費>
19.管理費は、NPO法人の各種の事業を管理するための費用で、総会及び理事会の開催運営費、管理部門に係る役職員の人件費、管理部門に係る事務所の賃借料及び光熱費等のその他経費をいう。
<事業費及び管理費の形態別分類>
20.事業費及び管理費は、それぞれ人件費及びその他経費に区分したうえで、形態別に表示しなければならない。 |
同上 |
「事業費」は、次の①と②の合計額になります。
①明らかに事業に関する経費として特定できる金額
②事業部門と管理部門に共通する経費のうち事業を行うために要した経費として合理的に算出された金額 ※
「管理費」は、次の③と④の合計額になります。
③管理部門の業務を行うために要した費用で、明らかに管理部門に関する経費として特定できる金額
④共通経費のうち、管
理部門の業務を行うために要した経費として合理的に算出された金額 ※
【事業費(①)の具体例】
ある事業を遂行するために支出した人件費、Tシャツ等の売上原価(仕入れや製作費)、チラシやポスターの印刷費、講師への謝金、会場の賃借料、特定の事業の寄付金の募集のためのファンドレイジング(資金調達)費等
【管理費(③)の具体例】
NPO法人の以下の管理部門の業務を行うために要した費用
[1]総会や理事会といった法人の組織運営、意思決定業務
[2]会報の発行やHPの運営などの広報、外部報告業務
[3]会費や特定の事業目的でない寄付金の募集のためのファンドレイジング業務
[4]日常の経理処理、予算の計画、税務申告等の経理業務
[5]社会保険や労働保険の手続き、給与計算、求人、福利厚生等の人事労務業務
[6]監事等による監査業務
【共通経費(②と④)の具体例】
人件費、事務所の賃借料、水道光熱費、通信費、消耗品費、コピー機やパソコンなどの備品の減価償却費等
※ 共通経費の按分方法
事業費と管理費に共通する経費や複数の事業に共通する経費は、合理的に説明できる根拠に基づき按分される必要があり、恣意的な操作は排除されなければなりません。
標準的な按分方法としては、以下のようなものが挙げられ、重要性が高いと認められるものについては、いずれの按分方法によっているかについて注記することが望まれます。
・従事割合(例:人件費 等)
・使用割合(例:消耗品費 等)
・建物面積比(例:事務所賃借料 等)
・職員数比(例:水道光熱費 等) |