わかるNPO法人会計基準の解説~収益及び費用の把握と計算(その2)18棚卸資産の計上

テーマ:NPO法人会計基準

 

NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき企業会計原則と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、収益及び費用の把握と計算(その2)18.棚卸資産の計上について見ていきます。

 

棚卸資産などの費用性資産は、取得原価で評価し、販売した時に費用とします。

時価が「著しく下落」したときは、時価をもって評価しなければならず(強制評価減)、また、時価が取得価額よりも低いときに時価で評価する方法(低価法)を任意に選ぶこともできます。

 

【企業会計原則とは】

企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。

【収益及び費用の把握と計算ーその2】

NPO法人会計基準(同注解)

企業会計原則(同注解)

解説

<棚卸資産の計上>
18.販売して対価を得るための棚卸資産は、購入又は製造した時点では費用とせず、実際に販売した時に費用とする。事業年度末において販売していない棚卸資産は貸借対照表に流動資産として計上する。
<貸借対照表原則>
(五 資産の貸借対照表価額)
資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分しなければならない。
期間損益を正しく計算するために、いずれ費用となるべき支出額を当期と次期以降に配分することを、費用配分の原則といいます。
費用配分の原則によって、棚卸資産や建物などの固定資産の取得価額のうち、その費消部分を当期の費用として配分するとともに、未費消部分を資産として残し、次期以降に配分することになります。
[注2]
<資産の貸借対照表価額>
10.資産の貸借対照表価額は、原則として、当該資産の取得価額に基づき計上しなければならない。
(五 資産の貸借対照表価額)
貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。
現行の制度会計では、原則的に資産は取得原価主義で評価されます。
取得原価とは、文字どおり、資産を取得したときの金額です。取得原価は、過去に経験した評価額であるため、検証可能であり、明瞭、簡便、かつ、統一性のある方法です。また、取得原価主義においては、資産の評価で評価益が計上される余地はありません
ただし、資産の時価が著しく下落したときは、回復の見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。 (五 資産の貸借対照表価額)
A ただし、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。

時価のある資産の時価が「著しく下落した」ときは、「回復の見込みがあると認められる場合」を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければなりません

著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化できるものではありませんが、時価が取得原価に比べて50%程度以上に下落した場合は、「著しく下落した」ときに該当します。
回復の見込みがあると認められる場合」とは、時価の下落が一時的なものであり、期末日後おおむね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準にまで回復する見込みのあることを合理的な根拠をもって予測できる場合を言います。つまり、将来回復すると証明できるような水準を言いますから、どちらかわからない、というレベルでは「回復見込みがない」と判断します。

[注2]
<棚卸資産>
11.棚卸資産は、取得価額をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得価額よりも下落した場合は、時価をもって貸借対照表価額とすることができる。
(五 資産の貸借対照表価額)
A たな卸資産については、原則として取得原価をもって貸借対照表価額とする。
たな卸資産の貸借対照表価額は、時価が取得原価よりも下落した場合には時価による方法を適用して算定することができる。
棚卸資産は、取得価額と時価とを比較して、どちらか低いほうの価額で評価することができます。これを低価法といいます。
企業は、多くの利害関係者に囲まれて事業活動を行っており、その健全な発展のため、予想される将来の危険に備えて、慎重な判断に基づく会計処理が要求されます。
そこで、企業会計原則は、「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」とする保守主義の原則を定めており、低価法はこの保守主義の適用例の一つです。

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