NPOの資金調達(ファンドレイジング)に会計士が果たす役割~小さな会計事務所からの提案

テーマ:NPOの資金調達

 

こんにちは。

東京都上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」代表の六浦雅夫です。

いまは、2月より株式会社の資金調達プロジェクトに入っており、3月末がちょうど折り返し地点で、このプロジェクトもあと2か月です。

このプロジェクトは、独立して最初の大型案件です。現在進行中のため、いまは詳しくお話することはできませんが、ほとんど前例のない、株式会社の新規上場の支援をさせていただいています。

平日の大部分をこのプロジェクトに費やす一方で、この期間にもいろいろ刺激を受けて、考えることもありましたので、いま私が考えていることをブログにまとめたいと思います。

一つは、会計士の業務について。最後に紹介しますが、世間から誤解されている部分もあるようですので、会計士の一般的な役割について、説明します。

次に、NPO法人について。「アイケイ会計事務所」はNPOに特化した会計事務所です。
「なぜ会計士がNPO?」という素朴な疑問に、あらためて丁寧に回答する必要があると思い、まずは、NPO法人の現状について、お話したいと思います。

最後に、NPO法人の現状認識を受けて、NPOの資金調達(ファンドレイジング)において会計士が果たす役割を、また「なぜいま変化が必要か」について、小さな会計事務所の代表の思いを発信したいと思います。

 

【会計士の業務について】

会計士の業務は、一言でいえば、企業の「資金調達」の支援です。

株式会社が、銀行から借入を行う場合も、資本市場において株式や社債を発行する場合も、債権者や株主などの資金提供者は監査済みの「財務諸表」を要求します。

会計士の関与の仕方としては、大別して3つありますが、一つは会社の従業員として開示情報の作成に携わる企業内会計士(①)、もう一つがコンサルタントとして会社の情報開示の支援を行う会計士(②)、最後は監査人として会社が作成した財務書類にお墨付きを与える会計士(③)です。

私は、約10年間、監査法人に勤務して主に③の業務を行ってきましたが、昨年独立し、いまは②の業務を行っています。そして、NPO専門にサービスを提供したいというのが、私の設立にかける思いです。

 

【NPO法人の現状について】

さて、「なぜ会計士がNPO?」という質問を受けることも多いですが、まずは、NPOの現状についてお話します。

現在、日本全国に45,000のNPO法人があると言われています。東京都だけでも約9,000の団体が所轄庁より法人格を付与され様々な活動を行っています。

社会には、NPOに対して、これだけのニーズがあるということです。

これまでの公共サービスでは、行政が主体となって提供するものとされ、市民はこれを供給される立場にありましたが、いまは、NPOなどの民間の諸団体が公共サービスの提供者の役割を担うことによって、これまで行政だけでは実施できなかった公共サービスの領域を切り開いていく方向へと、大きく考え方が変わってきています。

公開された情報に基づき市民が監視するというNPO法の趣旨にかんがみると、NPO法人は、寄付などの資金の使い道を情報開示していくことにより、支援者などへの説明責任を果たすことが求められます。

また、広く社会から資金を募るためには、株式会社がそうであるように、個人的なつながりのない資金提供者に対して、その資金提供者が求める情報開示を徹底的に行う必要があります。

しかし、現状では、すでに資金を提供している支援者に対しても、これから支援したいと願う潜在的な資金提供者に対しても、満足のいく情報開示を行っているNPO法人はほとんどありません。

資金提供者が、開示情報を利用して、その団体の事業を正しく知るためには、事業の実績や財政状態を判断するために、期間比較や同業者との比較ができる情報提供が必要です。
そのためには、一般に合意されたフレームワークに基づく開示が最低限必要となりますが、一般に認められた会計基準すら浸透していないのがNPO法人の現状です。

私が、「NPO法人会計基準の解説」を分かりやすくブログやツイッターで発信しているのは、そのためです。

どれだけのNPO法人が、市民の素朴な疑問に真剣に向き合っているでしょうか?利用者にとって分かりやすい情報開示を行っているでしょうか?

「NPOに寄付したら、寄付額のどれだけが運営費に使われるの?」
「残りのお金は寄付者の意図どおり支援を必要とする人にちゃんと届けられてるの?」

 

【NPOの資金調達(ファンドレイジング)に会計士が果たす役割~いま変化が求められます】

NPOは、社会的に意義のある活動を行っています。

世界には、私たちが目をそらしたくなるような現実があります。
本当に知らないことだらけですが、現実に目を向けると、知らなかったこと、見えなかったことが見えてきます。
NPOは、その厳しい現実に目を向けて、それを社会に発信し続け、支援を必要とする人と支援者とをつなぐ活動を行っています。

私も、多くの人に迷惑をかけながらも、それでも温かい支援をいただいて、生かされ、そして役割を与えられています。

私は、会計士としての立場で、NPOの社会貢献活動を資金調達面から支援し、その活動を通じて日本に寄付文化のより一層の広がりをもたらし、国民が助け合い・支え合う社会を実現したいと思って活動しています。

それが私から社会への恩返しになると信じています。

NPOは、これまでは、その団体の社会的意義を説明することで、人々の心に訴え、資金提供を受けてきたのだと思います。それだけ意義のある活動を行っているということですが、一方で、支援の広がりについて、いま、限界も感じているのではないでしょうか?

熱は冷めるものです。

ある意味で冷めた大人から支援を引き出すには、その人たちが求める、冷静で客観的な情報が必要です。

 

NPOの代表者様へ

代表者様の熱い思いとともに、私が作成した客観的な開示情報を携えて、一緒に企業の門を叩いてみませんか?

きっと社会を変えられると思います。

 

視点を変えれば、物事は違って見えてきます。

もう一度、アイケイ会計事務所のホームページを見てください。一貫したメッセージです。

 

「NPO法人は、情報公開が最重要事項のひとつです」

 

最後に、会計士に対する社会の誤解を解くために。

こんなつぶやきがあり、思わずリツイートしてしまいました。

「@cpa_color: 公認会計士を募集する企業は3つのタイプに分けられる→タイプC
【公認会計士はヤダ】理由:監査を受ける中で、会計士は指摘しかしないという印象がある企業。
プライドや給料ばかり高く、経理実務の知識もない。ましてや税務の知識なんてほとんどないと考えている。」

ブログを読んでいただけたら、分かっていただけましたよね?

企業の「資金調達」において、経理実務や税務の知識はそれほど大事ではないということです。
株主などの資金提供者が求めているのは、徹底した情報開示です。
特に重要なのは、株式会社では、「連結財務諸表」「企業結合」「事業セグメント」「金融商品」といった情報でしょうか。
NPO法人では、「活動計算書」「貸借対照表」「事業別損益」が、資金提供者が求めている基本情報です。