わかるNPO法人会計基準の解説~NPO法人に特有の取引等27使途等が制約された寄付金等の取扱い[注6]

テーマ:NPO法人会計基準

 

NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき企業会計原則と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、NPO法人に特有の取引等27.使途等が制約された寄付金等の取扱い[注6]使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱いについて見ていきます。

 

使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合には、正味財産を一般正味財産と指定正味財産に区分し、当該寄付等を指定正味財産に計上することになります。

 

【NPO法人に特有の取引等】

NPO法人会計基準(同注解)

解説

<使途等が制約された寄付金等の取扱い>
27.寄付等によって受入れた資産で、寄付者等の意思により当該受入資産の使途等について制約が課されている場合には、当該事業年度の収益として計上するとともに、その使途ごとに受入金額、減少額及び事業年度末の残高を注記する。[注5][注6]
寄付金については、受け取ったとき(入金時)に「受取寄付金」として収益計上します。(NPO法人会計基準第13項)

使途等が制約された寄付金で重要性が高い場合には、正味財産を一般正味財産と指定正味財産に区分し、当該寄付金を指定正味財産に計上することが望まれます。これは、当期に使途の制約が解除された収益とそうでない収益を分けて表示したほうが、当該法人の財務状況・活動状況をより的確に把握することができるためです。

「重要性が高い」と判断される寄付金には、例えば以下のようなものが考えられます。
・使途が震災復興に制約され、複数事業年度にまたがって使用することが予定されている寄付金
・奨学金給付事業のための資産として、元本を維持して、あるいは漸次取り崩して給付に充てることを指定された寄付金

[注6] 使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い

 

NPO法人会計基準注解

解説

22 <使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い>
使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合には、次のように処理する。
 
(1) 貸借対照表の正味財産の部を、指定正味財産及び一般正味財産に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、貸借対照表の「正味財産の部」に「指定正味財産」として計上します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産」として計上されます。
(2) 活動計算書は、一般正味財産増減の部及び指定正味財産増減の部に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、活動計算書の「指定正味財産増減の部」に「指定正味財産期末残高」として表示します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産期末残高」として表示されます。
(3) 使途等が制約された寄付等を受入れた場合には、当該受入資産の額を貸借対照表の指定正味財産の部に記載する。また寄付等により当期中に受入れた資産の額は活動計算書の指定正味財産増減の部に記載する。 使途が制約された寄付金について重要性が高い場合の会計処理について具体例をあげて仕訳を示すと、次のようになります。

(例)今期に集まった寄付金は5,000万円、そのうち2,000万円を被災者支援用物資に使用した場合
[1]寄付金の受入時

(借)現金預金 5,000万円

(貸)受取寄付金〈指定〉 5,000万円

「現金預金」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「受取寄付金」を活動計算書の指定正味財産増減の部(増加)に計上します。

[2]援助用物資5,000万円の購入時

(借)被災者援助物資 5,000万円

(貸)現金預金 5,000万円

「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「現金預金」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

(4) 使途等が制約された資産について、制約が解除された場合には、当該解除部分に相当する額を指定正味財産から一般正味財産に振り替える。 [3]被災者へ援助物資2,000万円を届ける。

(借)事業費:援助用消耗品費 2,000万円

(貸)被災者援助物資 2,000万円

「援助用消耗品費」を活動計算書の一般正味財産増減の部に計上するとともに、「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

[4]寄付者による制約の解除額を一般正味財産へ振替える。

(借)一般正味財産への振替額〈指定〉 2,000万円

(貸)受取寄付金振替額〈一般〉 2,000万円

一般正味財産への振替額」を活動計算書の指定正味財産増減の部(減少)に計上するとともに、「受取寄付金振替額
を活動計算書の一般正味財産増減の部(増加)に計上します。

(5) 指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳は財務諸表に注記する。 指定正味財産から一般正味財産への振替額2,000万円を「指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳」の注記に次のように記載します。

経常収益への振替額
当年度の被災者支援に対する振替額 2,000万円

参考URL

特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(内閣府・NPOホームページ)

実務担当者のためのガイドライン」(NPO法人会計基準協議会ホームページ)

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