わかるNPO法人会計基準の解説~NPO法人に特有の取引等30対象事業及び実施期間が定められている助成金、補助金等の注記

テーマ:NPO法人会計基準

 

NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき企業会計原則と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、NPO法人に特有の取引等30.対象事業及び実施期間が定められている助成金、補助金等の注記について見ていきます。

 

返還義務のない助成金、補助金等については、受け取ったとき(入金時)に収益(受取補助金等)として活動計算書に計上し、その内容、正味財産に含まれる期末残高等を注記します。

 

【NPO法人に特有の取引等】

NPO法人会計基準(同注解)

解説

<対象事業及び実施期間が定められている助成金、補助金等の注記>
30.対象事業及び実施期間が定められている助成金、補助金等で、当期に受取助成金又は受取補助金として活動計算書に計上したものは、使途等が制約された寄付金等に該当するので、その助成金や補助金等ごとに受入金額、減少額及び事業年度末の残高を注記する。
対象事業及び実施期間が定められた助成金、補助金等は、使途等が制約された寄付金等として扱い、受け取ったとき(入金時)に収益(受取補助金等)として活動計算書に計上し、その内容、正味財産に含まれる期首残高、当期増加額、当期減少額、正味財産に含まれる期末残高等を注記します。

なお、重要性が高い場合には、寄付金と同様に、正味財産を一般正味財産と指定正味財産に区分し、当該補助金等を指定正味財産に計上することが望まれます。

[注5] 使途等が制約された寄付等の内訳の注記

 

NPO法人会計基準注解

解説

21 <使途等が制約された寄付等の内訳の注記>
使途等が制約された寄付等の内訳の注記は以下のように行う。
 
(1) 正味財産のうち使途等が制約された寄付等の金額に対応する金額。 使途が制約された寄付金等には、明確な目的に使用されるべき目的の制約、将来の一定期間または特定日以後に解除される時間の制約、あるいは両者を含むものに区分されます。

こうした使途の制約は、受け入れた資産の制約目的が達成されたとき、時間が経過したとき、あるいはその両者が達成されたときに解除されます。

(2) 制約の解除による当期減少額は次のいずれかの金額による。
受入れた資産について制約が解除された場合、当該資産の帳簿価額。
受入れた資産について減価償却を行った場合、当該減価償却費の額。ただし備品又は車両等については、対象となる資産を購入して、対象の事業に使用したときに制約の解除とみなして当該取得額を減少額とすることができる。
受入れた資産が災害等により消失した場合には、当該資産の帳簿価額。
使途が制約された寄付金等について、制約が解除された場合には「使途等が制約された寄付等の内訳」の注記の当期減少額の欄に記載します。

具体的には、次のような状況を制約の解除として記載します。

(1)寄付者等の意思で定められた使途等が完了した場合
■被災者に支援物資を届けることを目的とする金銭の寄付については、支援物資を購入した時ではなく、実際に被災者に届けた時に制約は解除されたと考えます。
■土地及び建物の寄付については、土地は、永久に制約の解除はありませんが、建物は、減価償却により制約は解除されたと考えます。
■奨学基金として使用するための現金預金の寄付については、現預金を取り崩して奨学金の給付に充てることが条件であれば、給付した金額が制約の解除と考えます。
■事業に使う備品や車両等を購入する目的の金銭の寄付については、購入した備品や車両等の取得価額のうち、減価償却費に相当する金額について、制約が解除されたと考えます。ただし、備品や車両等に使途が指定されている寄付金等の場合は、購入して事業のために使用を開始した時に、制約が解除されたとみなすこともできます。
■一定期間保有することを条件に贈与を受けた株式の寄付については、期間が経過したときに制約が解除されたと考えます。

(2)制約が解除されていない資産が災害等により消失した場合は、消失した部分について制約が解除されたと考えます。

(3)制約が解除されていない資産の時価が著しく下落した場合は、下落した部分について制約が解除されたと考えます。

(3) 返還義務のある助成金、補助金等の取扱い
返還義務のある助成金、補助金等について、受取助成金及び受取補助金として計上した場合、当該計上額を当期受入額として記載する。
なお、助成金及び補助金の合計額並びに未使用額は備考欄に記載することが望ましい。
返還義務のある助成金、補助金等について、内訳の注記を行う場合、「
当期増加額」には、実際に入金した補助金等の額ではなく、あくまでも当期に計上した受取補助金等の額(収益計上額)を記載し、当期に事業の実施済みの費用の額を「当期減少額」に記載するので、「当期増加額」と「当期減少額」は同額となり「期末残高」は0となります。
そのため、収益計上額以外に、補助金等の総額や、決算期末での未使用額も一緒に見ることができる方がわかりやすいので、こうした情報(補助金等の合計額及び未使用額)を注記の「備考」欄に記載することが望まれます。

[注6] 使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い

 

NPO法人会計基準注解

解説

22 <使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い>
使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合には、次のように処理する。
 
(1) 貸借対照表の正味財産の部を、指定正味財産及び一般正味財産に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、貸借対照表の「正味財産の部」に「指定正味財産」として計上します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産」として計上されます。
(2) 活動計算書は、一般正味財産増減の部及び指定正味財産増減の部に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、活動計算書の「指定正味財産増減の部」に「指定正味財産期末残高」として表示します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産期末残高」として表示されます。
(3) 使途等が制約された寄付等を受入れた場合には、当該受入資産の額を貸借対照表の指定正味財産の部に記載する。また寄付等により当期中に受入れた資産の額は活動計算書の指定正味財産増減の部に記載する。 使途が制約された寄付金について重要性が高い場合の会計処理について具体例をあげて仕訳を示すと、次のようになります。

(例)今期に集まった寄付金は5,000万円、そのうち2,000万円を被災者支援用物資に使用した場合
[1]寄付金の受入時

(借)現金預金 5,000万円

(貸)受取寄付金〈指定〉 5,000万円

「現金預金」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「受取寄付金」を活動計算書の指定正味財産増減の部(増加)に計上します。

[2]援助用物資5,000万円の購入時

(借)被災者援助物資 5,000万円

(貸)現金預金 5,000万円

「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「現金預金」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

(4) 使途等が制約された資産について、制約が解除された場合には、当該解除部分に相当する額を指定正味財産から一般正味財産に振り替える。 [3]被災者へ援助物資2,000万円を届ける。

(借)事業費:援助用消耗品費 2,000万円

(貸)被災者援助物資 2,000万円

「援助用消耗品費」を活動計算書の一般正味財産増減の部に計上するとともに、「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

[4]寄付者による制約の解除額を一般正味財産へ振替える。

(借)一般正味財産への振替額〈指定〉 2,000万円

(貸)受取寄付金振替額〈一般〉 2,000万円

一般正味財産への振替額」を活動計算書の指定正味財産増減の部(減少)に計上するとともに、「受取寄付金振替額」を活動計算書の一般正味財産増減の部(増加)に計上します。

(5) 指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳は財務諸表に注記する。 指定正味財産から一般正味財産への振替額2,000万円を「指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳」の注記に次のように記載します。

経常収益への振替額
当年度の被災者支援に対する振替額 2,000万円

参考URL

特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(内閣府・NPOホームページ)

実務担当者のためのガイドライン」(NPO法人会計基準協議会ホームページ)