わかるNPO法人会計基準の解説~財務諸表の注記31(6)使途等が制約された寄付等の内訳

テーマ:NPO法人会計基準

 

NPO法人会計基準について、制度会計(会社法、金融商品取引法、税法)が尊重すべき企業会計原則と比較しながら、その特徴を、誰もが理解できるやさしい言葉で、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、財務諸表の注記(6)使途等が制約された寄付等の内訳について見ていきます。

 

当期に収益として計上された使途等が制約された寄付金、助成金、補助金等については、その内容、正味財産に含まれる期末残高等を注記します。

 

【企業会計原則とは】

企業会計の実務のなかに慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。企業会計原則は、1982年以来、修正が行われておらず、その後、時代に対応して会計基準が順次公表され、会計慣行を補強しています。

会計基準は、企業会計原則に優先して適用されるべき基準とされ、公正なる会計慣行に含まれると解釈されています。つまり、企業会計原則会計全般の公正なる会計慣行をまとめたものであり、個々の論点に関する会計慣行は、各会計基準に委ねられているのです。

【財務諸表の注記】

NPO法人会計基準(同注解)

解説

<財務諸表の注記>
31.財務諸表には、次の事項を注記する。
 
(6)使途等が制約された寄付等の内訳 当期に収益として計上された使途等が制約された寄付金、助成金、補助金等については、その内容、正味財産に含まれる期首残高、当期増加額、当期減少額、正味財産に含まれる期末残高等を明確に記載します。

[注5] 使途等が制約された寄付等の内訳の注記

 

NPO法人会計基準注解

解説

21 <使途等が制約された寄付等の内訳の注記>
使途等が制約された寄付等の内訳の注記は以下のように行う。
 
(1) 正味財産のうち使途等が制約された寄付等の金額に対応する金額。 使途が制約された寄付金等には、明確な目的に使用されるべき目的の制約、将来の一定期間または特定日以後に解除される時間の制約、あるいは両者を含むものに区分されます。

こうした使途の制約は、受け入れた資産の制約目的が達成されたとき、時間が経過したとき、あるいはその両者が達成されたときに解除されます。

(2) 制約の解除による当期減少額は次のいずれかの金額による。
受入れた資産について制約が解除された場合、当該資産の帳簿価額。
受入れた資産について減価償却を行った場合、当該減価償却費の額。ただし備品又は車両等については、対象となる資産を購入して、対象の事業に使用したときに制約の解除とみなして当該取得額を減少額とすることができる。
受入れた資産が災害等により消失した場合には、当該資産の帳簿価額。
使途が制約された寄付金等について、制約が解除された場合には「使途等が制約された寄付等の内訳」の注記の当期減少額の欄に記載します。

具体的には、次のような状況を制約の解除として記載します。

(1)寄付者等の意思で定められた使途等が完了した場合
■被災者に支援物資を届けることを目的とする金銭の寄付については、支援物資を購入した時ではなく、実際に被災者に届けた時に制約は解除されたと考えます。
■土地及び建物の寄付については、土地は、永久に制約の解除はありませんが、建物は、減価償却により制約は解除されたと考えます。
■奨学基金として使用するための現金預金の寄付については、現預金を取り崩して奨学金の給付に充てることが条件であれば、給付した金額が制約の解除と考えます。
■事業に使う備品や車両等を購入する目的の金銭の寄付については、購入した備品や車両等の取得価額のうち、減価償却費に相当する金額について、制約が解除されたと考えます。ただし、備品や車両等に使途が指定されている寄付金等の場合は、購入して事業のために使用を開始した時に、制約が解除されたとみなすこともできます。
■一定期間保有することを条件に贈与を受けた株式の寄付については、期間が経過したときに制約が解除されたと考えます。

(2)制約が解除されていない資産が災害等により消失した場合は、消失した部分について制約が解除されたと考えます。

(3)制約が解除されていない資産の時価が著しく下落した場合は、下落した部分について制約が解除されたと考えます。

(3) 返還義務のある助成金、補助金等の取扱い
返還義務のある助成金、補助金等について、受取助成金及び受取補助金として計上した場合、当該計上額を当期受入額として記載する。

なお、助成金及び補助金の合計額並びに未使用額は備考欄に記載することが望ましい。

返還義務のある助成金、補助金等について、内訳の注記を行う場合、「当期増加額」には、実際に入金した補助金等の額ではなく、あくまでも当期に計上した受取補助金等の額(収益計上額)を記載し、当期に事業の実施済みの費用の額を「当期減少額」に記載するので、「当期増加額」と「当期減少額」は同額となり「期末残高」は0となります。
そのため、収益計上額以外に、補助金等の総額や、決算期末での未使用額も一緒に見ることができる方がわかりやすいので、こうした情報(補助金等の合計額及び未使用額)を注記の「備考」欄に記載することが望まれます。

参考URL

特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(内閣府・NPOホームページ)

実務担当者のためのガイドライン」(NPO法人会計基準協議会ホームページ)

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