【わかるNPOの法人税】《収益事業》「低廉譲渡等」

テーマ:NPO法人の法人税

 

こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO法人専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。

NPO法人は、「法人税法上の収益事業」を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得に対してのみ課税されることとなっています。

この「収益事業」は、法人税法に定められた34種類の事業で「継続して」「事業場を設けて」営まれるものをいいますが、それぞれの事業について、法人税法などの規則も参照しながら、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、《収益事業》「低廉譲渡等」について見ていきます。

NPO法人が資産の譲渡等(収益事業)を時価を下回る対価で行う場合は、本来の事業の範囲内である限り、時価による課税はなされません。

「低廉譲渡等」

NPO法人は、各事業年度の所得のうち「収益事業」から生じた所得以外の所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課されませんが、「収益事業」から生じた所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課されることとなります。(法人税法第7条)

法人税法は、「有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供」にかかる収益を益金に算入すべき金額とし(法第22条第2項)、また、対価の額が時価に比して低いときは、当該差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれるものとしているため(法第37条第8項)、法人税法上の収益事業を「無償」または「低廉」な対価で行うときは、原則として、その「時価」との差額を益金に算入し、対応する額を「寄付金」として費用計上すべきことになります。

ただし、NPO法人が通常の対価の額に満たない対価による資産の譲渡又は役務の提供を行った場合においても、その資産の譲渡等がNPO法人の本来の目的たる事業(特定非営利活動に係る事業)の範囲内で行われるものである限り、その資産の譲渡等については法第37条第8項《低廉譲渡等》の規定の適用はないものとされています。(法人税基本通達15-2-9)

したがって、NPO法人が「収益事業」を行う場合は、それが本来の事業の範囲内で行われる限りにおいては、時価を下回るものであっても、実際に受け取った対価の額を益金に算入すれば足りることになります。

 

(法人税法)

(内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税)

第7条 内国法人である公益法人等又は人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、第5条(内国法人の課税所得の範囲)の規定にかかわらず、各事業年度の所得に対する法人税を課さない。

(各事業年度の所得の金額の計算)

第22条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3~ 省略

(寄附金の損金不算入)

第37条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2~省略

内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

 

(法人税基本通達)

(低廉譲渡等)

15-2-9 公益法人等又は人格のない社団等が通常の対価の額に満たない対価による資産の譲渡又は役務の提供を行った場合においても、その資産の譲渡等が当該公益法人等又は人格のない社団等の本来の目的たる事業の範囲内で行われるものである限り、その資産の譲渡等については法第37条第8項《低廉譲渡等》の規定の適用はないものとする。(昭56年直法2-16「八」により追加、昭63年直法2-1「三」、平15年課法2-7「五十四」により改正)

国税庁ホームページ 収益事業に係る所得の計算等「低廉譲渡等」