NPOの税制優遇と組織形態について

テーマ:NPO
 
こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。
 
先日、知り合いの方から「地域に貢献する事業を行いたい」と相談を受けました。その際、「お金を儲けたいので組織形態としてはNPOではなく株式会社」とおっしゃっていました。
「NPO=儲けてはいけない」という誤解をお持ちの方がまだ多いようです。
 
確かにNPOは非営利組織(=利益を出資者等に分配しない組織)ですが、その組織が掲げる社会課題の解決のためには、経営が重要であり、組織を維持し事業を継続するためには利益が必要です。
 
営利組織との最大の違いは、その利益を「配当」しないで、事業に「再投資」することであり、事業の継続なしに事業目的(NPOの場合は受益者の支援)を達成できないのは営利組織も非営利組織も同じです。
 
今日は、株式会社(営利組織)とNPO法人や社団法人(非営利組織)の組織形態や税制の違いについて分かりやすく解説したいと思います。
 
【運営面からの比較】
NPO法人は、市民参加型の社会課題の解決に優れた組織形態(株式会社との比較)
ただし、NPO法人は、市民による監視を前提としているため、株式会社と比べても情報開示の要求が高い。

NPO法人 株式会社
活動目的 社会問題の解決 利益の最大化
主な活動財源 寄付・会費等 対価収入
課税対象 収益事業のみ課税対象
寄付金や会費や助成金、補助金は課税対象外
寄付金や会費や助成金、補助金も含め、すべての収入が課税対象
利益 活動に再投資 配当可
活動への参加方法 寄付、会費(社員)、ボランティア、従業員 出資(株主)、従業員
最高意思決定機関 社員総会
頭数多数決(一人一議決権)
株主総会
資本多数決(一株一議決権)
公開性 高い
誰でも社員になることができる(社員の資格に不当な条件を付せない)
低い
定款に定めることで、株式譲渡を制限できる(株式の譲渡制限)
情報開示要求 高い
事業報告書等の閲覧⇒一般に公開
低い
計算書類等の閲覧⇒株主及び債権者のみ
公認会計士又は監査法人による監査 義務なし 義務あり
(資本金5億円以上又は貸借対照表の負債の部の合計額200億円以上の場合)


 
【税制・会計面からの比較】
寄付型NPOでは、認定NPO法人に税制上のメリットがある(公益社団法人との比較)
ただし、事業型NPOの場合は、公益目的事業非課税を受けられる公益社団法人が有利。

認定NPO法人 公益社団法人
課税対象 収益事業のみ課税対象
寄付金や会費や助成金、補助金は課税対象外
同左
収益事業課税 特定非営利活動に係る事業であっても収益事業はすべて課税 公益目的事業は収益事業であっても非課税
寄付者(個人)に対する税制優遇 所得控除
税額控除
所得控除のみ(※)
寄付者(法人)に対する税制優遇 一般の寄付金と別枠で一定の金額を損金算入 同左
寄付者(相続人)に対する税制優遇 寄付した相続財産は、原則として非課税 同左
みなし寄付金の損金算入 次のいずれか多い金額を限度
①所得金額の50%
②年200万円
次のいずれか多い金額を限度
①所得金額の50%
②公益目的事業の実施に必要な金額
会計基準 NPO法人会計基準 公益法人会計基準
公認会計士又は監査法人による監査 義務なし 義務あり
(貸借対照表の負債の部の合計額50億円以上の場合)
目的 (特定非営利活動)
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
(公益目的事業)
1.学術及び科学技術の振興を目的とする事業
2.文化及び芸術の振興を目的とする事業
3.障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
4.高齢者の福祉の増進を目的とする事業
5.勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
6.公衆衛生の向上を目的とする事業
7.児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
8.勤労者の福祉の向上を目的とする事業
9.教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
10.犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
11.事故又は災害の防止を目的とする事業
12.人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
13.思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
14.男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
15.国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
16.地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
17.国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
18.国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
19.地域社会の健全な発展を目的とする事業
20.公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
21.国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
22.一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
23.前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

(※)公益社団法人のうち、一定の要件(パブリック・サポート・テストや情報公開の要件)を満たすものは、所得税の税額控除の対象となります。