テーマ:公益法人会計基準
こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。
公益社団・財団法人や公益認定を申請する一般社団・財団法人などは、公益法人会計基準に準拠して財務諸表を作成することが求められます。
公益法人会計基準について、同じNPO(非営利組織)の会計基準であるNPO法人会計基準と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。
第5回の今日は、公益法人会計基準「会計区分」について見ていきたいと思います。
【公益法人会計基準】
公益法人会計基準は、昭和52年の制定後、平成16年会計基準で全面的な改正がなされ、平成20年会計基準は、公益法人制度改革関連三法の成立を受けて平成20年12月1日以降開始する事業年度から実施するものとされています。
【会計区分】
公益法人会計基準(同注解) |
NPO法人会計基準(同注解) |
解説 |
4 会計区分 公益法人は、法令の要請等により、必要と認めた場合には会計区分を設けなければならない。[注2] |
<複数事業の事業別開示> 22.事業費は、事業別に区分して注記することができる。その場合収益も事業別に区分して表示することを妨げない。[注4] <特定非営利活動以外の事業を実施する場合の区分経理> |
すべての公益法人は、「収支相償」、「公益目的事業比率」、「遊休財産額」の計算にかかる基礎的情報の提供のため、正味財産増減計算書の内訳表を作成し、以下の3つに区分して表示しなければなりません。 ①公益目的事業に関する会計(「公益目的事業会計」) ②収益事業等に関する会計(「収益事業等会計」) ③管理業務やその他の法人全般に係る事項に関する会計(「法人会計」) また、収益事業等から生じた利益の50%超を公益目的事業財産へ繰り入れる公益法人(※)については、貸借対照表の内訳表も作成しなければなりません。 (※)公益法人は、収益事業等から生じた利益の50%については公益目的事業財産への繰入が強制されています。これは、収益事業等は公益目的事業の財源確保のために行われるものという趣旨に立った規定です。 また、公益法人は、公益目的事業の財源確保のために必要がある場合には、自発的に収益事業等から生じた利益の50%超を繰り入れることも可能です。
【受取会費の会計処理】 なお、公益社団・財団法人ともに、会費の徴収にあたりその使途を具体的な割合で定めている場合は、その割合に応じた金額を各会計区分に計上することができます。
【費用の会計区分ごとの集計方法】 (1)事業ごとに直接把握される費用の賦課 各事業部門及び管理部門において個別に発生する費用は、その部門の属する会計区分の費用として計上します。 事業費・・・法人の事業の目的のために要する費用で、①「公益目的事業会計」あるいは②「収益事業等会計」に区分計上します。 管理費・・・法人の各種の事業を管理運営するために要する費用で、③「法人会計」 に区分計上します。 (2)複数の事業あるいは会計区分にまたがって発生する費用の配賦 複数の事業あるいは会計区分にまたがって発生する共通費用については、次のような配賦基準を用いてそれぞれの事業又は会計区分に按分することになります。 ・建物面積比(例:事務所賃借料 等) ・職員数比(例:水道光熱費 等) ・従事割合(例:人件費 等) ・使用割合(例:消耗品費 等) ・収入金額の割合(例:個別の配賦が困難な費用) ・直接事業費の割合(例:個別の配賦が困難な費用) (3)収益事業等から生じた利益の繰入額を算定する際の管理費の按分 公益法人は、収益事業等から生じた利益の50%を公益目的事業会計へ繰り入れることが義務付けられているため、収益事業等の利益額を算定する必要があります。その際、管理費のうち収益事業等に按分される額を計算しなければなりませんが、上記「共通費用の配賦基準」と同様に、合理的な基準を用いて按分することになります。 その結果、算定された収益事業等の利益から公益目的事業財産への繰入額は、「他会計振替額」として正味財産増減計算書の内訳表に表示します。
NPO法人が複 NPO法人が定款に「その他の事業」を掲げて、特定非営利活動に係る事業以外の事業を行っている場合には、活動計算書を「特定非営利活動に係る事業」と「その他の事業」に区分して表示しなければなりません。 |
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[注4]事業費と管理費の区分 <事業費> 18.事業費は、NPO法人が目的とする事業を行うために直接要する人件費及びその他経費をいう。 <管理費> <事業費及び管理費の形態別分類> |
「事業費」は、次の①と②の合計額になります。
①明らかに事業に関する経費として特定できる金額 ②事業部門と管理部門に共通する経費のうち事業を行うために要した経費として合理的に算出された金額 ※
「管理費」は、次の③と④の合計額になります。 ③管理部門の業務を行うために要した費用で、明らかに管理部門に関する経費として特定できる金額 ④共通経費のうち、管理部門の業務を行うために要した経費として合理的に算出された金額 ※
【事業費(①)の具体例】 ある事業を遂行するために支出した人件費、Tシャツ等の売上原価(仕入れや製作費)、チラシやポスターの印刷費、講師への謝金、会場の賃借料、特定の事業の寄付金の募集のためのファンドレイジング(資金調達)費等
【管理費(③)の具体例】 NPO法人の以下の管理部門の業務を行うために要した費用 [1]総会や理事会といった法人の組織運営、意思決定業務 [2]会報の発行やHPの運営などの広報、外部報告業務 [3]会費や特定の事業目的でない寄付金の募集のためのファンドレイジング業務 [4]日常の経理処理、予算の計画、税務申告等の経理業務 [5]社会保険や労働保険の手続き、給与計算、求人、福利厚生等の人事労務業務 [6]監事等による監査業務
【共通経費(②と④)の具体例】 人件費、事務所の賃借料、水道光熱費、通信費、消耗品費、コピー機やパソコンなどの備品の減価償却費等 ※ 共通経費の按分方法 事業費と管理費に共通する経費や複数の事業に共通する経費は、合理的に説明できる根拠に基づき按分される必要があり、恣意的な操作は排除されなければなりません。 標準的な按分方法としては、以下のようなものが挙げられ、重要性が高いと認められるものについては、いずれの按分方法によっているかについて注記することが望まれます。 ・従事割合(例:人件費 等) ・使用割合(例:消耗品費 等) ・建物面積比(例:事務所賃借料 等) ・職員数比(例:水道光熱費 等) |
[注2]内訳表における内部取引等の相殺消去について 当該公益法人が有する会計区分間において生ずる内部取引高は、正味財産増減計算書内訳表において相殺消去するものとする。また、公益法人が会計区分を有する場合には、会計区分間における内部貸借取引の残高は、貸借対照表内訳表において相殺消去するものとする。 |
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会計区分間の取引があるときは、正味財産増減計算書内訳表において内部取引高を相殺消去します。
また、一時的な資金不足を補うための会計区分間の貸借や、他の会計区分に対する一時的な立替や未払などを処理する「他会計貸借」勘定があるときは、貸借対照表内訳表において内部取引消去により相殺消去します。 |
参考:NPO法人会計基準 「NPO法人会計基準について~収益及び費用の把握と計算(その1)」
参考図書:公益法人・一般法人の会計実務/公益財団法人公益法人協会