テーマ:公益法人会計基準
こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。
公益社団・財団法人や公益認定を申請する一般社団・財団法人などは、公益法人会計基準に準拠して財務諸表を作成することが求められます。
公益法人会計基準について、同じNPO(非営利組織)の会計基準であるNPO法人会計基準と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。
第7回の今日は、公益法人会計基準「財務諸表の注記」について見ていきたいと思います。
【公益法人会計基準】
公益法人会計基準は、昭和52年の制定後、平成16年会計基準で全面的な改正がなされ、平成20年会計基準は、公益法人制度改革関連三法の成立を受けて平成20年12月1日以降開始する事業年度から実施するものとされています。
【財務諸表の注記】
公益法人会計基準(同注解) |
NPO法人会計基準(同注解) |
解説 |
財務諸表の注記 財務諸表には、次の事項を注記しなければならない。 |
<財務諸表の注記> 31.財務諸表には、次の事項を注記する。 |
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(1)継続事業の前提に関する注記 |
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公益法人会計基準は、事業の継続を前提としており、 ①継続事業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、 ②当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策を講じてもなお継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、 継続事業の前提に関する事項を財務諸表に注記します。 継続事業の前提に関する注記については、平成20年会計基準で新たに追加されました。 継続事業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況としては、以下のような項目が例示されています。「公益法人の継続事業の前提について(非営利法人委員会研究報告第21 号)」 <財務指標関係> <財務活動関係> <事業活動関係> <その他> |
(2) ■資産の評価基準及び評価方法 ■固定資産の減価償却方法 ■引当金の計上基準 等 財務諸表の作成に関する重要な会計方針 |
(1)重要な会計方針 ■資産の評価基準及び評価方法 ■固定資産の減価償却方法 ■引当金の計上基準 ■施設の提供等の物的サービスを受けた場合の会計処理方法 ■ボランティアによる役務の提供を受けた場合の会計処理の取扱い 等、 財務諸表の作成に関する重要な会計方針 |
会計は、利害関係者が法人の実態を正しく把握し、理解できるように明瞭な表示を求めています。(明瞭性の原則)
この明瞭表示の要求として求められるのが、「重要な会計方針」その他の「注記」です。注記は、正味財産増減計算書(活動計算書)や貸借対照表に掲げられている重要項目の内容、金額等について、補足的説明を加えたものです。 注記事項を充実させることで、財務諸表の明瞭性が高まり、有用な会計情報を提供することができるため、積極的な開示が求められます。 |
(3)重要な会計方針を変更したときは、その旨、変更の理由及び当該変更による影響額 | (2)重要な会計方針を変更したときは、その旨、変更の理由及び当該変更による影響額 | いったん採用した会計処理方法は毎期継続して適用するのが原則ですが、その変更に正当な理由があり、かつ、変更により従来の方法よりも合理的な結果が期待できる場合には、会計方針を変更することが認められます。 その場合は、その旨、変更の理由及び当該変更による影響額を財務諸表に注記する必要があります。 |
(4)基本財産及び特定資産の増減額及びその残高 |
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基本財産及び特定資産について、資産毎に当期中の増減(「期首残高」、「当期増加額」、「当期減少額」、「期末残高」)を記載します。 |
(5)基本財産及び特定資産の財源等の内訳 |
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基本財産及び特定資産について、資産毎に当期末残高の財源(「指定正味財産から充当額」、「一般正味財産からの充当額」)を記載します。 |
(6)担保に供している資産 |
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担保に供している資産があればそれを記載します。 |
(7)固定資産について減価償却累計額を直接控除した残額のみを記載した場合には、当該資産の取得価額、減価償却累計額及び当期末残高 |
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固定資産について、貸借対照表において直接控除による表示を行った場合は、当該資産の「取得価額」、「減価償却累計額」、「当期末残高」(帳簿価額)を記載します。 |
(8)債権について貸倒引当金を直接控除した残額のみを記載した場合には、当該債権の債権金額、貸倒引当金の当期末残高及び当該債権の当期末残高 |
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債権について、貸借対照表において直接控除による表示を行った場合は、当該債権の「債権金額」、「貸倒引当金の当期末残高」、「債権の当期末残高」(帳簿価額)を記載します。 |
(9)保証債務(債務の保証を主たる目的事業とする公益法人の場合を除く。)等の偶発債務 |
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偶発債務(債務の保証、係争事件に係る賠償義務など)がある場合は、それについて記載します。 |
(10)満期保有目的の債券の内訳並びに帳簿価額、時価及び評価損益 |
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満期保有目的の債券については、補足情報として時価の注記が求められており、銘柄毎に「帳簿価額」(貸借対照表計上額)、「時価」、「評価損益」を記載します。 |
(11)補助金等の内訳並びに交付者、当期の増減額及び残高 | (6)使途等が制約された寄付等の内訳 | 使途等が制約された補助金等については、その内訳、増減(「期首残高」、「当期増加額」、「当期減少額」、「期末残高」)などを記載します。 |
(12)基金及び代替基金の増減額及びその残高 |
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社団法人において、基金及び代替基金を有する場合は、受入・返還による増減(「期首残高」、「当期増加額」、「当期減少額」、「期末残高」)を記載します。 |
(13)指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳 | [注6]使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い 22.使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合には、次のように処理する。 (5)指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳は財務諸表に注記する。 |
制約の解除による指定正味財産から一般正味財産への振替額を「指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳」の注記に次のように記載します。
[指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳] 経常収益への振替額 経常外収益への振替額 |
(14)関連当事者との取引の内容[注17] | (9)役員及びその近親者との取引の内容[注7] | 法人と関連当事者との取引のうち、重要な取引について、取引の相手方の概要、取引の内容、金額、条件などを開示します。 ただし、取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引や役員報酬については、開示対象外の取引とされるため、注記する必要はありません。 |
[注17]関連当事者との取引の内容について 1 関連当事者とは、次に掲げる者をいう。 (1)当該公益法人を支配する法人 (2)当該公益法人によって支配される法人 (3)当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人 (4)当該公益法人の役員又は評議員及びそれらの近親者 2 関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければならない。 3 関連当事者との間の取引のうち次に定める取引については、2に規定する注記を要しない。 |
[注7]役員及びその近親者との取引の注記 <役員及びその近親者の範囲> 23.役員及びその近親者は、以下のいずれかに該当する者をいう。 (1)役員及びその近親者。(2親等内の親族) (2)役員及びその近親者が支配している法人。 <注記の除外> |
【関連当事者との取引(公益法人)】 Ⅰ 関連当事者の範囲 (1)当該公益法人を支配する法人(支配法人)とは、当該公益法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している法人をいいます。(親法人) (2)当該公益法人によって支配される法人(被支配法人)とは、当該公益法人が他の法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している場合の他の法人をいいます。(子法人) (3)当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人とは、支配法人が当該公益法人以外に支配している法人をいいます。(兄弟法人) (4)当該公益法人の役員又は評議員及びそれらの近親者
Ⅱ 重要性の基準 (1)法人(支配法人、被支配法人又は同一の支配法人をもつ法人)との取引 ①正味財産増減計算書項目に係る関連当事者との取引 経常収益又は経常費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、経常収益又は経常費用の合計額の10%を超える取引を開示します。 経常外収益又は経常外費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、100万円を超える損益に係る取引を開示します。 ②貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引 その金額が資産の合計額の1%を超える取引を開示します。 (2)個人(役員又は評議員及びそれらの近親者)との取引 正味財産増減計算書項目及び貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、100 万円を超える取引をすべて開示対象とします。
【役員及びその近親者との取引(NPO法人)】 NPO法人も、法人と役員及びその近親者との間の取引は原則として注記を要します。 役員及びその近親者との取引については、その取引金額を確実に注記する必要があります。 役員及びその近親者との間にまったく取引がない場合や金額的重要性が低い場合には注記の必要はありません。 重要性が乏しいとして注記する必要がないのは、活動計算書に属する取引については、「発生金額」が100万円以下の取引、貸借対照表に属する取引については、「発生金額及び残高」が100万円以下の取引です。この100万円という金額は、一つ一つの取引金額ではなく、役員ごとに、かつ勘定科目ごとに、年間の合計金額で考えます。また貸借対照表に属する取引、つまり固定資産の購入や借入取引などは、「発生金額及び残高」で考えますから、仮に残高が100万円以下であっても、発生金額が100万円を超えていたら注記が必要です。 なお、役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い並びにこれらに準ずる取引の注記は法人の任意とされています。 |
(15)キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲及び重要な非資金取引 |
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キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲を記載します。重要な非資金取引があればそれも記載します。 |
(16)重要な後発事象 (17)その他公益法人の資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産増減の状況を明らかにするために必要な事項 |
(10)その他NPO法人の資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産の増減の状況を明らかにするために必要な事項 | 【重要な後発事象】 決算日後において発生し、翌事業年度以降の財務諸表に影響を及ぼす事象(後発事象)のうち、重要なものについては、財務諸表に注記を行うことが必要です。 【その他】 |
参考:NPO法人会計基準 「NPO法人会計基準について~財務諸表の注記」
参考図書:公益法人・一般法人の会計実務/公益財団法人公益法人協会