【わかる公益法人会計基準】正味財産増減計算書の区分[注6]指定正味財産の区分について

テーマ:公益法人会計基準

 

こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。

 

公益社団・財団法人や公益認定を申請する一般社団・財団法人などは、公益法人会計基準に準拠して財務諸表を作成することが求められます。

公益法人会計基準について、同じNPO(非営利組織)の会計基準であるNPO法人会計基準と比較しながら、その特徴を分かりやすく解説します。

今日は、公益法人会計基準「正味財産増減計算書の区分」[注6]指定正味財産の区分について見ていきたいと思います。

 

寄付によって受け入れた、寄付者等によりその使途に制約が課されている資産の額は、正味財産増減計算書上、指定正味財産増減の部に記載します。

 

【公益法人会計基準】

公益法人会計基準は、昭和52年の制定後、平成16年会計基準で全面的な改正がなされ、平成20年会計基準は、公益法人制度改革関連三法の成立を受けて平成20年12月1日以降開始する事業年度から実施するものとされています。

 

【正味財産増減計算書】

公益法人会計基準(同注解)

NPO法人会計基準(同注解)

解説

[注6]指定正味財産の区分について
寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途について制約が課されている場合には、当該受け入れた資産の額を、貸借対照表上、指定正味財産の区分に記載するものとする。また、当期中に当該寄付によって受け入れた資産の額は、正味財産増減計算書における指定正味財産増減の部に記載するものとする。

[注1]重要性の原則の適用について
重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
(3)寄付によって受け入れた金額に重要性が乏しい場合、寄付者等(会員等を含む。以下同じ。)からの制約が課される期間に重要性が乏しい場合、又は寄付者等からの制約に重要性が乏しい場合には、当該寄付によって増加した正味財産を指定正味財産の増加額としないで、一般正味財産の増加額として処理することができる。

<使途等が制約された寄付金等の取扱い>
27.寄付等によって受入れた資産で、寄付者等の意思により当該受入資産の使途等について制約が課されている場合には、当該事業年度の収益として計上するとともに、その使途ごとに受入金額、減少額及び事業年度末の残高を注記する。[注6]
公益法人は、寄付(※)によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途、処分又は保有形態について制約が課せられている場合は、当期中に当該寄付によって受け入れた資産の価額を、正味財産増減計算書における指定正味財産増減の部に記載するものとされます。

(※)ここで言う「寄付」は、広い意味で受入側の反対給付を伴わない資産の受入部分のことを指し、国や地方公共団体からの補助金や助成金、資産の低廉譲渡による受贈益も含まれます。

ただし、ア.寄付によって受け入れた金額に重要性が乏しい場合
イ.寄付者等(会員等を含む。)からの制約が課される期間に重要性が乏しい場合
ウ.寄付者等(会員等を含む。)からの制約に重要性が乏しい場合
は、当該寄付によって増加した正味財産を指定正味財産増減の部に記載しないで、一般正味財産増減の部に記載することができます。

公益法人が寄付によって資産を受け入れたときの会計処理は、NPO法人の「使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い」[注6]と同様です。下記【参考】参照。

 

参考:NPO法人会計基準 「わかるNPO法人会計基準の解説~NPO法人に特有の取引等27使途等が制約された寄付金等の取扱い[注6]

参考図書:公益法人・一般法人の会計実務/公益財団法人公益法人協会

 

【参考】NPO法人会計基準注解

[注6] 使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い

 

NPO法人会計基準注解

解説

22 <使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合の取扱い>
使途等が制約された寄付等で重要性が高い場合には、次のように処理する。
 
(1) 貸借対照表の正味財産の部を、指定正味財産及び一般正味財産に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、貸借対照表の「正味財産の部」に「指定正味財産」として計上します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産」として計上されます。
(2) 活動計算書は、一般正味財産増減の部及び指定正味財産増減の部に区分する。 期末時点でまだ使途どおりに使っていない金額は、活動計算書の「指定正味財産増減の部」に「指定正味財産期末残高」として表示します。以下の設例で言えば、3,000万円が「指定正味財産期末残高」として表示されます。
(3) 使途
等が制約された寄付等を受入れた場合には、当該受入資産の額を貸借対照表の指定正味財産の部に記載する。また寄付等により当期中に受入れた資産の額は活動計算書の指定正味財産増減の部に記載する。
使途が制約された寄付金について重要性が高い場合の会計処理について具体例をあげて仕訳を示すと、次のようになります。

(例)今期に集まった寄付金は5,000万円、そのうち2,000万円を被災者支援用物資に使用した場合

[1]寄付金の受入時

(借)現金預金 5,000万円

(貸)受取寄付金〈指定〉 5,000万円

「現金預金」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「受取寄付金」を活動計算書の指定正味財産増減の部(増加)に計上します。

[2]援助用物資5,000万円の購入時

(借)被災者援助物資 5,000万円

(貸)現金預金 5,000万円

「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産に計上するとともに、「現金預金」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

(4) 使途等が制約された資産について、制約が解除された場合には、当該解除部分に相当する額を指定正味財産から一般正味財産に振り替える。 [3]被災者へ援助物資2,000万円を届ける。

(借)事業費:援助用消耗品費 2,000万円

(貸)被災者援助物資 2,000万円

「援助用消耗品費」を活動計算書の一般正味財産増減の部に計上するとともに、「被災者援助物資」を貸借対照表の流動資産の減少とします。

[4]寄付者による制約の解除額を一般正味財産へ振替える。

(借)一般正味財産への振替額〈指定〉 2,000万円

(貸)受取寄付金振替額〈一般〉 2,000万円

一般正味財産への振替額」を活動計算書の指定正味財産増減の部(減少)に計上するとともに、「受取寄付金振替額」を活動計算書の一般正味財産増減の部(増加)に計上します。

(5) 指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳は財務諸表に注記する。 指定正味財産から一般正味財産への振替額2,000万円を「指定正味財産から一般正味財産への振替額の内訳」の注記に次のように記載します。

経常収益への振替額
当年度の被災者支援に対する振替額 2,000万円