【わかるNPOの法人税】《収益事業》⑭席貸業

テーマ:NPO法人の法人税

 

こんにちは。東京都台東区上野・浅草で開業しているNPO専門の公認会計士・税理士事務所「アイケイ会計事務所」です。

NPO法人は、「法人税法上の収益事業」を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得に対してのみ課税されることとなっています。

この「収益事業」は、法人税法に定められた34種類の事業で「継続して」「事業場を設けて」営まれるものをいいますが、それぞれの事業について、法人税法などの規則も参照しながら、分かりやすく解説したいと思います。

今日は、《収益事業》⑭席貸業について見ていきます。

NPO法人が、有償で席貸しを行う事業を行うときは、「席貸業」として「収益事業」に該当することになります。

【席貸業】

NPO法人が行う会議室の一時貸付は収益事業になるか。

NPO法人が建物の一部を時間を限って他人に貸し付ける場合は、「席貸業」に該当します。

ただし、「収益事業」というためには、「継続して」席貸しを行う必要があり、一時的なものは「収益事業」とはいえません。

したがって、会議室の一時貸付は、その会議室が他人に貸し付けることを前提として設置されたものでない限り、「収益事業」に該当しません。

 


NPO法人が、会員である個人や団体に対して、光熱費や償却費、租税公課などの実費相当額を使用料として法人の施設を使用させる場合、収益事業になるか。(会員に対する実費貸付け)

NPO法人が有償で席貸しを行うときは、相手方、席貸しの目的、相手方の利用状況などの如何を問わず、原則として、「席貸業」に該当します。

ただし、法人の行う席貸業のうち、

(1)「国又は地方公共団体の用に供するための席貸業」と

(2)「法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、その会員その他これに準ずる者の用に供するための席貸しのうち、その利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの」

は、「席貸業」から除かれており、(2)の要件は、次のとおりです。

①会員に準ずる者

「会員その他これに準ずる者」とは、NPO法人の正会員のほか、準会員、賛助会員等として法人の業務運営に参画し、その業務運営のための費用の一部を負担している者や、当該法人が複数の団体を構成員とする組織である場合はその間接の構成員等が含まれます。(法人税基本通達15-1-38の2)

②利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの

「その利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの」に該当するかどうかは、既往の実績等に照らし、その事業年度における会員等に対する席貸しの全体の収益と費用とがおおむね均衡するような利用料金が設定されているかどうかにより判定することとされています。

すなわち、その判定は1回の席貸しごとに行うのではなく、事業年度単位で行えばよく、また、過去の事業年度の実績からみて会員等に対する席貸しによる利益が出ないと見込まれるような料金が設定されていればよいことになります。(法人税基本通達15-1-38の3)

したがって、会員に対して、実費相当額を使用料として法人の施設を使用させている場合は、「席貸業」に該当せず、「収益事業」になりません。

 

(法人税法施行令)

(収益事業の範囲)

第五条 法第二条第十三号(収益事業の意義)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。

十四 席貸業のうち次に掲げるもの

イ 不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業

ロ イに掲げる席貸業以外の席貸業(次に掲げるものを除く。)

(1) 国又は地方公共団体の用に供するための席貸業

(2)~(3) 省略

(4) 法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、当該法人の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうちその利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの

 

(法人税基本通達)

(席貸業の範囲)

15-1-38 令第5条第1項第14号イ《席貸業》に規定する「不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業」には、興行(15-1-53により興行業に該当しないものとされるものを含む。)を目的として集会場、野球場、テニスコート、体育館等を利用する者に対してその貸付けを行う事業(不動産貸付業に該当するものを除く。)が含まれることに留意する。(昭56年直法2-16「七」により追加、昭59年直法2-3「九」により改正)

(注) 展覧会等のための席貸しは、同号イの娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸しに該当する。

(会員に準ずる者)

15-1-38の2 令第5条第1項第14号ロ(4)《非課税とされる会員等を対象とする席貸業》に規定する「会員その他これに準ずる者」には、公益法人等の正会員のほか、準会員、賛助会員等として当該公益法人等の業務運営に参画し、その業務運営のための費用の一部を負担している者、当該公益法人等が複数の団体を構成員とする組織である場合のその間接の構成員等が含まれるものとする。(昭59年直法2-3「九」により追加)

(利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの)

15-1-38の3 公益法人等の行う席貸業が令第5条第1項第14号ロ(4)に規定する「その利用の対価の額が実費の範囲を超えないもの」に該当するかどうかは、既往の実績等に照らし、当該事業年度における会員その他これに準ずる者に対する席貸しに係る収益の額と費用の額とがおおむね均衡すると認められるような利用料金が設定されているかどうかにより判定する。(昭59年直法2-3「九」により追加)

国税庁ホームページ 席貸業

34種類の事業一覧 「NPO法人の法人税について~収益事業の種類と具体的判定